「Outer Wilds」クリア後に考える宇宙の眼と量子ゆらぎ信号に関する考察、あるいは宇宙の音楽

SFアドベンチャーゲーム「Outer Wilds」の宇宙の眼と量子ゆらぎ信号に関する考察です。

通常エンディングを見た前提のネタバレ・個人のざっくり考察になりますのでご注意ください。

 

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 宇宙は暖かい焚火とマシュマロとともに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(警告終わり)

さて、Outer Wildsのエンディングを見て壮大すぎる展開にぼんやりしてしまったが、単なる勢いだけではなく意味がある展開だと感じたので、考えたことを残しておく。

ご意見や異論等ありましたらコメントいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

考察の結論

  • 「宇宙の眼」とは、宇宙の観測者である。
  • 「宇宙の眼」が発していた信号とは、壮大なコーラスであり、主人公たちが住む宇宙の観測者となった者がイメージしていた音楽である。量子ゆらぎ信号は、その音楽の1パートとである。
  • 主人公たちが最後に奏でた音楽は、新しい宇宙で量子ゆらぎ信号として響き続けている。

 

 

それでは、この結論に至るまでの経緯を書く。

 

①老いた宇宙の終焉

この宇宙は、主人公のいる太陽系もそれ以外の銀河も含めてすべてが年老いて終わりかけている。このことは「船」に残された別星系からのNomaiの受信記録でも指摘されており、Chertの天体観測でも老いた星による超新星爆発があらゆる場所で頻発していることが示されている。(宇宙的な時間間隔で?)もうすぐ、主人公のいる宇宙からはすべての星が消え去ってしまう。

全てが消え去る前に、老いて死にゆく宇宙は更新されなければならない。

 

②宇宙の眼の呼び声が呼び覚ますもの

そもそもOuter Wildsにおける冒険の発端は何だったのか?それは『宇宙誕生よりも古い時代から発信されている』宇宙の眼の信号である。

寿命を迎えて消えていく星が増える中で、Nomaiたちは安全に住める星系を探していた。その旅の途中で、奇妙な宇宙の眼の信号を受信したひとつのNomaiの船が、危険を省みず主人公たちのいる太陽系にワープしてきた。幾多の犠牲を払いながら、Nomaiたちは宇宙の眼を見つけるため、灰の双子星プロジェクト・太陽ステーション・軌道探査砲を建造する。しかし、謎の彗星に詰まっていた幽霊物質が宇宙に拡散したことにより、Nomaiたちは道半ばで絶滅してしまう。

Hearthianである主人公は、Nomaiが築いたテクノロジーを活用し、彼らの足跡をたどりながら、最後にただひとり「宇宙の眼」にたどりつく。「宇宙の眼」は量子物質でできており、南極にある量子の渦には莫大な量子エネルギーが送り込まれている。

宇宙の眼は、量子のかけらと同じ大量の量子物質でできているようだ。ここは太陽系内の全ての量子のかけらの源となっている。南極にある量子の渦に量子エネルギーを送り込む非常に強力な量子嵐を特徴としている(公式wikiより)

これまで続いてきた冒険の最後、主人公は「宇宙の眼」の南極で量子の渦のなかへ飛び込む。

 

ここから先の展開は実際の時空から離れ、主人公の意識下のイメージ、あるいは主人公の意識を宇宙の眼の量子物質が反映した情景が描かれていく。(量子の月が対応する惑星の情景を反映していたことを思い出してほしい)

  • 博物館の展示物に関するコメント、Solanumに第六の場所で出会っていないと彼女が出現しないことなどから、この情景は主に主人公の意識から作り出されていると考えられる。
  • 量子の星にいると時間や空間は関係なくなり、おそらく遍在的な存在となってしまうので、Solanumの演奏や銀河の消滅など主人公が直接知りえないだろうイメージも含まれている。

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この空間で、主人公はマシュマロを食べ、HearthianとNomaiの探索者たちは焚火の周りでOuterwilds venturesの曲を合奏する。合奏が響き焚火が暖かく燃える間に、(おそらく莫大な量子エネルギーにより)次の宇宙の可能性となる球体ができあがっていく。演奏が終わり焚火が冷め切った後、主人公は球体に飛び込む。

これにより新たな宇宙が始まり、143億年後にマシュマロを持ち焚火を囲む知的生命がいる宇宙が描かれて、ゲームは終わる。

 

このように最後までプレイしても、宇宙の眼がなぜ、誰に向けて信号を発信していたのかは語られない。

 

③宇宙の観測による可能性の収斂=宇宙の誕生

さて、結局主人公がたどり着いた「宇宙の眼」とはなんだったのか?それは名前のとおり、新しい宇宙を創るための宇宙の観測者のことだと考えられる。

観測とは、知覚により遍在している量子のふるまいを確定することである。たとえば、量子の月は視覚で認識しない限り、どの場所にあるかははっきりしないが、量子の月を知覚してしまえば一つの場所に存在することが確定する。

莫大なエネルギーを持つ宇宙の眼の量子の渦には、時空における未確定のあらゆる可能性が存在しているのだろう。量子の渦の中で主人公が一つの可能性だけを観測することで、一つの宇宙の存在を確定させたと考えられる。

主人公が最後に飛び込む球体は新しい宇宙の可能性そのものであり、球体を観測することにより主人公は新しい宇宙を確定させる存在=宇宙の眼となったのだ。(球体に飛び込む前のGabbroやSolanumたちとの会話でもこの内容が示唆されている)

Solanum:あらゆる可能性が存在しているうちに、この瞬間にしばらくとどまるのは魅力的よね。でも観察者が可能性を潰さないかぎり、可能性はそれ以上のものにはならないわ。

Solanum:あとはわたしたちの前にある無数の可能性を崩壊させるだけ。

Gabbro:なあ、こういうのは本当に楽しいな。それにちょっといかしたものを作る手伝いができるんだ。不満なんてないさ。正確には私がやるわけじゃないが、似たようなもんだ。

 

ちなみに宇宙の観測者となった存在はどうなるのだろうか?

湖底の洞窟での記載によると、意識ある物質が量子物質に接触し観察をやめると量子物質に取り込まれると書いてある。おそらく主人公も量子の渦の中で意識を失い、量子物質と同化してしまったのだと考えられる。

Coleus:僕たちは理論を立てた。意識ある存在が量子物質に接触し、観測者としての行動をやめると、その存在は量子物質に取り込まれ、一緒に移動することができる。

しかし、宇宙の眼の量子物質はおそらく、次の宇宙に持ち越される。

宇宙の眼でリトルスカウト(探査機)を失った場合、最後の一枚絵でリトルスカウトが新しい宇宙を漂っている(公式wikiより)

さらに、量子物質と同化してしまった観測者が持っていたイメージは、新しく確定した宇宙に影響を及ぼすらしい。そのイメージこそ、量子の渦の中で意識を失う直前に主人公の認識から作られた焚火のシーンだ。143億年後の新たな宇宙で知的生命体がマシュマロを持って焚火を囲んでいるのは、明らかに主人公が持っていたイメージに影響されている。

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 HearthianとNomaiの合奏の後、新しい宇宙を観測する直前の様子(焚火は燃え尽きマシュマロも食べ切ったね)

 

④宇宙の音楽

ここでもう一度、「宇宙の眼」が出していた信号について考えてみたい。

ゲームの中で「宇宙の眼」信号を直接聞く機会はない。しかし、「宇宙の眼」と同じ量子物質でできている量子のかけらが出す量子ゆらぎ信号は聴くことができる。量子のかけらは全て「宇宙の眼」で生成されていること、「宇宙の眼」が量子物質からできていることを考えると、「宇宙の眼」の出していた信号とは、量子のかけらが発信する量子ゆらぎ信号をすべて合わせた音になると考えられる。

量子ゆらぎ信号の音は、高低異なる声のような音声である。この音声は宇宙の中でとても異質な音となっており、似たような音声をゲーム中に聞くことは一切ない。そして、太陽系の外に出て量子ゆらぎ信号の音を重ねて聞くと、コーラスのような響きとなる。

Nomaiの船が受信した「宇宙の眼」信号とは、NomaiやHearthianがいる宇宙では聞いたことがないような壮大なコーラスだったのではないだろうか。この信号は、誰が、いつ、どのように発信したのだろうか?

 

・誰が?

もちろん「宇宙の眼」である。「宇宙の眼」=観測者が宇宙を生み出す法則にしたがい、主人公たちが生きていた宇宙も、前の宇宙にいた観測者が「宇宙の眼」となることで創造されたはずである。信号の発生者は、主人公のいた宇宙における「宇宙の眼」となった観測者だろう。

 

・いつ?

信号は宇宙の誕生より古い時間から発信されている。観測者によりコーラスが奏でられたのは、主人公たちの生きる宇宙が観測される前のはずである。そして、宇宙が観測される前に奏でられる音楽を私たちはすでに見ている。エンディングでの主人公たちの最後の合奏だ。

  • 焚火に火がともる
  • HearthianとNomaiのみんなで合奏する。主人公はマシュマロを食べる=同時並行で宇宙の可能性の球が出来上がる
  • 焚火が燃え尽き合奏が終わる
  • 観測者が宇宙の可能性の球に飛び込んで観測する=次の宇宙誕生

これとおなじような経過が前の観測時にもくりかえされていたのではないのだろうか。主人公と同様に、前の観測者も次の宇宙を観測する前にコーラスを奏でていた(奏でたイメージを持った)のであれば、信号は宇宙誕生よりも古い時点で発信されることになる。

 

・どうやって?

論拠は少ないが、今までの推測から信号発信の流れを考えてみる。

  1. 観測者が量子の渦の中で音楽を演奏するイメージを持つ=量子物質に反映され信号発信
  2. 観測者が宇宙を観測し、新しい宇宙誕生
  3. 観測後、観測者は量子物質に取り込まれる
  4. 宇宙の眼の量子物質と量子物質が発信した宇宙の眼信号は、新しい宇宙に持ち越される
  5. 宇宙の眼から飛散したかけらは、宇宙の眼信号の1パートを新しい宇宙で鳴らし続ける

信号発信の仕組みはゲーム内で何も描かれないが、無理やり理屈づけるとすれば、観測者のイメージが量子物質のなかで音楽として反映される→量子物質が振動することで信号として発信するという感じではないだろうか。

 

以上の推測から、「宇宙の眼」が発する信号=コーラスは、主人公のいる宇宙の観測者となった存在が宇宙を観測する前に奏でていた音楽だと考えられる。

主人公たちが楽器を奏でていたように、前の観測者はおそらく合唱で歌う習慣があったのだろう。前の観測者が宇宙を観測する前にイメージの中で奏でていた合唱が、宇宙の眼の信号となり、主人公たちのいた宇宙で量子ゆらぎ信号として合唱の1パートを宇宙に響かせていたのではないだろうか。

 

そして、この「宇宙の眼」信号が発信されるサイクルは、主人公が新しい宇宙を創る時にも同様にくりかえされるのだと私は考えている。「宇宙の眼」となった主人公がイメージの中で最後に奏でたHearthianとNomaiの合奏は、「宇宙の眼」信号となり、新しい宇宙でその音楽の一部が量子ゆらぎ信号として発信され続けている

以上を、OuterWildsにおける「宇宙の眼」及び量子ゆらぎ信号の考察の結論としたい。

 Riebeck:過去は過去だ。でも、それは…ほら、それでいいんだ!完全に消え去ることはないんだ。未来は常に過去の上に築かれる。たとえそれをこの目で見ることはできなくても。

 

 

⑤奏でられ続ける音楽

ここからさらに飛躍した考察を続ける。

Outerwildsの世界で宇宙が誕生する際には、観測者となる存在が必要となる。宇宙の眼に赴き観測できる程度に好奇心と知性が必要とされる以上、観測者とはなんらかのイメージを持てるような知的存在だと想定できる。

であるなら、「宇宙の眼」信号を発信するサイクルは、主人公たちのいた宇宙や主人公が創った宇宙に限った話ではなく、今まで観測され老いて死んだいくつもの宇宙、そしてこれから観測されて存在することになる宇宙でも同様だとは考えられないだろうか。要するに「宇宙の眼」信号発信サイクルはすべての宇宙で繰り返されてきた(これから繰り返す)のだと考えてみるのだ。

 

観測者の持っていたイメージは、「宇宙の眼」信号として次の宇宙に自動的に発信される。この推論に基づけば、Solanumが疑っていたように「宇宙の眼」信号は特定の対象や目的をもって発信されるのではない。観測者のイメージを反映して量子物質が発した、ただの信号である。

しかし、もしその宇宙に好奇心と知性がある存在がいたならば、宇宙誕生よりも古くから発信される信号を聞いてしまったら調べずにはいられないのではないだろうか。「宇宙の眼」信号は必然的にNomaiのような知的好奇心を持つ生命を惹きつけ、「宇宙の眼」へと導く。「宇宙の眼」にたどり着いた者は観測者となり、そのイメージの一部を「宇宙の眼」の信号として発信される。

 

これがすべての宇宙で起こってきたことなのだとすれば、「宇宙の眼」の信号は、「宇宙の眼」に赴く知的好奇心のある存在を生み出し、観測者として新しい宇宙を生み出すシステムとして機能しているといえるだろう。このシステムは知的好奇心によって奏でられ続ける、宇宙生成の音楽サイクルなのだ。発信されるイメージは音楽に限らないかもしれないけど。

 

以上の推論から考えた、OuterWildsにおける宇宙生成サイクルモデル仮説を簡単に書く。

宇宙内の知的存在が、宇宙誕生より古い「宇宙の眼」信号を受信して興味を持つ

 ↓

知的存在は、発信される信号をたどって「宇宙の眼」に赴く

 ↓

「宇宙の眼」に到着した知的存在は量子の渦に飛び込む。この時、知的存在が持っていたイメージの一部が「宇宙の眼」信号として発信される

 

渦に飛び込んだ知的存在の観測により、無限に存在していた可能性が収束し、一つの宇宙が確定=生成される。この宇宙には「宇宙の眼」の信号が発信された状態となっている。

  ↓

宇宙内の知的存在が、宇宙誕生より古い「宇宙の眼」信号を受信して興味を持つ

(以下ループ)

 

まとめ

NomaiやHearthianが存在する宇宙は終わりを迎えてしまったけれど、彼らが残した音楽は新たな宇宙で響き続け、また生まれるであろう知的存在を惹きつけるのだろう。

そして、新しい宇宙にはアンコウがいないことを強く望みたい。

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(参考)

公式wiki

Official Outer Wilds Wiki (gamepedia.com) 

 

宇宙の眼についての考察動画

自分の考察と重なっている部分があるかも(英語なのでざっくりしか分からなかった)

The Eye Of The Universe And Its Mechanics Explained - Outer Wilds Ending Explained - YouTube

 

最後に

Outer Wildsをクリアするにあたって、多くのインターネットによる知識に助けられました。彼らの助けがなければとても最後までたどり着けなかったと思います。この文章がインターネットのどこかでOuter Wildsについて考える方の一助となれば幸いです。

 

12/14論旨を整理、スクリーンショット・引用を追加