有志翻訳したゲーム、あるいは忘れがたい作品たち

有志翻訳したゲームをまとめました。

翻訳作品概要(2024.3 Steamセール時点)

 

Kentucky Route Zero

2022/6/24非公式翻訳mod公開。

2022/12/14公式採用(NetflixiOSAndroid版公開)

2023/8/17公式採用(PC edition、TV editionアップデート)

失いつづける者たちがたどる道、静かで美しく余白に満ちたケンタッキー0号線

5つの幕と5つの幕間劇で構成されたテキストアドベンチャー

届け先の分からない荷物を運ぶため閉店間近のアンティークショップの配達員が、寂れゆくケンタッキー州のどこかを進んでいく話。映像も文章も音もすべてが静かで美しく余白に満ちている。地の底で待つ幽霊たちのように。

Steam: Kentucky Route Zero, 非公式翻訳mod

 

悪夢的機械翻訳を修正し、フォントをオリジナルに変え、進行不能バグ等のパッチを同梱した非公式翻訳mod公開をきっかけに、翻訳が公式採用となりました。

開発者から配信・収益化について問題ない旨確認しています。

 

各場面の概要・解説、進め方が分からなくなった場合はこちらをどうぞ。

その他翻訳にかかる諸々「私家翻訳雑記」、リプレイの記録、考えたことなどのメモはこちらから

 

各種ネット・ゲームメディアにて

名作ゲーム「Kentucky Route Zero」、非公式日本語化MODがついにリリース 幻想的なマジックリアリズムの世界へようこそ- ねとらぼ

『Kentucky Route Zero』PC、コンソール版の難ありだった日本語翻訳が本日(8/18)のアプデで改善 | ファミ通.com

ADV『Kentucky Route Zero』ashi_yuri氏インタビュー【有志日本語化の現場から】 | Game*Spark

 

Momotype

2022/7/16日本語化パッチ公開。作者許諾有。

あなたのための被造物と過ごす憂鬱な午後

かわいらしく思索的な短編ホラービジュアルノベル。ちょっとSF風味。無料。
全体的に奇妙かつ内省的で、かわいらしい見た目からは想像していない展開へと連れていかれることになる。クリア・全実績解除まで1時間程度。

作者から配信・収益化についても了承いただいてますので、配信者さんもお気軽にどうぞ!

Steam: Momotype, 日本語化パッチ

 

Critters for Sale

2022/11/23日本語化パッチ公開。作者許諾有。

悪魔と邪教グリッチにまみれた世界の狭間へ

5つの断章から描かれる、とにかく怪しげなアドベンチャー
ビジュアルと演出がとにかく強烈で、言葉にしがたいところがある。鮮烈なビジュアル、クールな音楽、切れのいい効果音、アングラめいた意匠、そして突然の幕切れ。全体を通して不意に銃口を突き付けられたような不穏さと魅力があり、人によっては忘れられない体験になるだろう怪作。

作者から配信・収益化についても了承いただいています。

Steam: Critters for Sale, 日本語化patch

 

 

The Elysian Field

2022/12/26非公式日本語翻訳mod公開。許諾確認中。

弓折れ尽き果てたどる永眠の地
どこかの敗残兵となって死に際の兵士たちの記憶を聞きながらさまよい歩く、10分で終わるウォーキングシム。コンパクトな作品だがテキスト・音楽・環境すべてきれいにまとまっていて、とても心地良くプレイできる静謐で美しい作品。

Steam: The Elysian Field, 非公式翻訳mod

 

FAITH: The Unholy Trinity

2023/5/5非公式日本語翻訳mod公開。開発からの翻訳ポリシーに則り作成。

信仰のみを頼りとせよ、始めたことを終わらせるために。

一年前の失敗した悪魔祓いを再び自分の手で始めようとするとある神父の物語。レトロゲーム風シンプルアクション、巧みな恐怖演出、不穏で禍々しい悪魔崇拝と立ち向かう物語が魅力の、Steamレビュー3000件越え「圧倒的に好評」を誇るインディホラー。

Steam: FAITH: The Unholy Trinity, 非公式翻訳mod

 

各種ネット・ゲームメディアにて

「誰にとっても作品が楽しめる環境を作りたい」ホラーACT『FAITH: The Unholy Trinity』ashi_yuri氏インタビュー【有志日本語化の現場から】 | Game*Spark

 

 

Squirrel Stapler

2023/9/18私家翻訳テキスト公開

2024/4/29非公式日本語翻訳mod公開

DUSK開発者のDavid氏による奇想短編ホラー「リスホチキスどめ」

静かで謎めいて気味の悪い雰囲気が最高な、1~2時間程度で遊べるミニマムな佳品

君も森でリスを狩って、ホチキスどめして、神に会おう!

Steam: Squirrel Stapler

 

「永遠の去年のなかで会いしましょう」Lorelei and the Laser Eyes紹介

迷路のなかのホテルのなかの映画のなかの邸宅のなかのゲームのなかの迷宮のなかの記憶のなかの...

Lorelei and the Laser Eyesは迷宮の謎を解いていくことで、あなたの頭のなかを迷宮にするゲームです。

 

 

概要

あなたは謎の男から中欧の暗い森に佇むホテル「Hotel Letztes Jahr (Hotel Last Year: 去年)」へ招かれた謎の女になって、なかであふれるパズルを解き、秘密と記憶と真実を探ります。

シンプルながら多様で奥深くたくさんの謎解きにあふれたパズルアドベンチャー

クリアまで20-25時間程度。



パズルゲーム

森に囲まれた古色蒼然としたホテルを舞台に、鍵を見つけ、暗証番号を当てることからはじめ、暗号、迷路、抜け道、推理、クイズ、様々なパズルがあなたを待っています。

プレイヤーの進行を指示するわかりやすい導線はなく、すべてあなたがゲームの中で見つけ、考え、解いて、進んでいく必要があります。目に映るすべてのアイテム・テキストがヒントであり、あなたへのサインです。しっかりと周りを、手に持っているものを見て、目に焼き付け、考えてください。

ヒント機能はありませんが、ひとつずつの謎は小粒でシンプル。ひとつの謎が解けると、別の謎へ繋がるヒントとさらに多くの謎が手に入ります。いまわからない謎もまた別の場所で手がかりを得ることがあるかもしれません。

パズルを解くためにゲーム内資料を参照することが不可欠ですが、手に入れた資料はメニューからいつでも見られ、解法はゲーム内で入手できる資料・情報に限られるなど、システム周りは親切で快適です。

難易度の高さが喧伝されますが、ひとつずつの謎は素直でヒントもフェア。パズル苦手で普段はほとんどパズルゲームをしない自分でもクリアできたので、パズル初級~中級の方もテイストが合えばなんとかなるかもしれません。

 

屹然とプレイヤーを突き放すパズル群は、冷たく意味深な美しさを湛えています。

シンプルな数合わせや迷路からはじまり、古今のゲームや映画やコンピュータなどさまざまなパズルが説明なく現れては消え、重なり続けていくなか、いつか謎解きに倦み疲れたあなたの頭の中でパズルが繋がりはじめたときに、あなただけの絢爛で怜悧で美しいパズルの迷宮が完成するはずです。

 

ストーリー・演出

ストーリーや構成もまた、パズル同様に魅力的で複雑に組み上げられています。不可解な男女と謎のアートプロジェクトというミステリー仕立てではじまる物語は、1847年・1963年・2014年と事件が起きた過去現在未来が溶け合いながら、やがて犯罪やオカルト・陰謀・神秘主義など不穏な雰囲気に彩られていき、謎と共に危うくあなたを引き込みます。

男と女、過去の事件、映画製作とスーパーコンピュータープロジェクト、芸術と創造と破壊、陰鬱で魅惑的で執拗に繰り返されるキーワードは、パズルと共に眩暈のように頭をかき混ぜ、現実とは違う場所へあなたを連れていきます。

 

パズルの答え、パズルを解く経験、パズルそのものが浮かび上がらせていく物語は、往年のサバイバルホラーやパズル・アドベンチャーゲーム、映画「去年マリエンバートで」や「8 1/2」、ポール・オースター「幻影の書」など様々な文化を参照し、その魔術を組み合わせたものです。偏執的なまでに唯美主義的で反復するイメージを用いながら、ゲームというメディアの特性を十二分に活かした物語構造は、入り組み複雑で、安易な理解を拒みます。

この精緻に練り上げられた物語自身もまた、美しい迷宮と言えるでしょう。

 

物語を飾る贅を凝らされた演出も、非常に目を見張るものです。

色調を抑えながら赤とピンクの鮮烈なコントラストで誘うように視線を導くグラフィック、背景と二重写しとなりゆらめく画面、静かで物憂げでときに不穏な音楽・環境音、ヒントであると同時に細部まで贅を尽くしたテキスト、ゲーム内の要素すべてが計算され、制御され、美しく謎に満ちた迷宮を形作るために奉仕しています。

 

翻訳・留意事項等

日本語翻訳は大変丁寧で、台詞や文章、ストーリーを示唆するとともにパズルのヒントともなる各種資料はきちんと翻訳されています。またフォント選択なども含めて、心地よく読み進められる適切なローカライズが施されています。日本語においても、謎めいた本作を雰囲気よく、パズル含めて十分に楽しむことができるでしょう。



ゲームの色彩演出上、現時点(2024/5/25)では色覚特性の方ある方にはヒントが見づらい画面となっている場合があります。また、画面で一部点滅が激しいシーンがありますのでご注意を。

そして最後になりますが、本作は明瞭さや爽快さよりも美しく謎めいた迷宮でさまよい耽溺しつづけることを求める人のための作品です。その点どうぞご留意ください。

 

最後に

非常に人を選ぶ作品ですが、以上を読んで気になる方には唯一無二の体験ができるゲームとして、文句なしでおすすめです。

お越しの際はお手元にメモとペンと電卓をお忘れなく。

それでは、永遠の「去年」のなかでお会いしましょう。

Hotel Letztes Jahr」永遠の去年の場所で

 

 

製品ページ(Steam・Switch)

 

公式サイト

もうひとつの2023年のゲームレビュー

2023年末に「令和ビデオゲームグラウンドゼロ」で『オルタナティブな作品』というテーマでYoutubeのコメントでお話しさせていただいた2023年発売のゲームレビュー3本を追記・補足のうえ再掲します。

2023年の世界を覆っていた雰囲気を、すこし違った角度からデジタルゲームというメディアで見られたらいいなと思って書きました。あなたがまだプレイしてない、もうひとつの作品と出会うきっかけになれば幸いです。

 

 

Fading Afternoon

消えゆく真昼。

The Friends of Ringo Ishikawa等を開発したロシアの個人ゲーム開発者yeo氏の新作。出所した時代遅れのヤクザの男性をくにおくんライクなゲームスタイルで、ときに叙情的にときに虚無的に描く意欲作。ゲームの概要・魅力についてはヨージロ氏によるファミ通レビューが詳しい。

多様な選択・エンディング分岐がありながら結末はひとつというドライなストーリーテリング、必要十分な描写と余白を残したドットグラフィック、泥臭くどこかリアルさの残るアクション、間を持たせた映画的演出と密度高く豊かな人間描写と、語るべき内容に収斂していくスタイルの統一性は他作品と一線を画す本作の大きな魅力である。

一方で不親切なチュートリアル、リプレイによる魅力を味わうためのゲーム導線の弱さ、多発するバグなどの阻害要素も多く、アップデートも打ち切られたことから、本作が評価を上げるのは難しい状況となっている。

 

だが、確立したスタイルにより北野映画や実録ヤクザ映画などの映画で見てきた感傷・感動がビデオゲームのなかで体感できるのは稀有な魅力であるとともに、映画やゲームなど日本カルチャーの中で描かれてきた(一定傾向内ではあるが)様々な「男らしさ」の魅力・弱さ・限界が、ロシアという国で受容され、ゲームとして結晶化された現状ほぼ唯一の作品である。

なお、ヤクザ映画を踏襲するような言葉遣いを反映した、良質で素晴らしい日本語ローカライズにも賛意を表したい。

 

そして本作は、多様なセクシャリティ・生き方を肯定していく現代のメインストリームとは正反対のところに存在する。強さと暴力の仕切る社会にしか生きる場所を見いだせなかった男は、それがどんなに叙情的に描かれようとも、期限切れで死を迎えることしかできない。

この作品が2023年のロシア・モスクワで完成したことも偶然ではないはずだ。

store.steampowered.com

 

台北大空襲

1945年5月31日、第二次大戦下に日本領であった台湾は敵国となる米国から空襲を受けた。政情の複雑さから埋もれがちだった台北大空襲、そして日本占領下の歴史を、少女の視点から描くアドベンチャーゲーム

開発者の祖父の話が開発の発端となっており、為政者や軍人ではなく、一般市民の視点から戦争を描く。ゲームの概要・魅力については洋ナシ氏のIGN記事が詳しい。

本作の美点は、しっかりと時代考証がなされた美術・文章と共感しやすいキャラクター・ストーリーにより、ほとんど忘れられ、埋もれていた空襲及び日本統治時代の台湾という過去をゲームという形で体験できることだ。

全編に置いて丁寧かつ誠実につくられており、ストーリーは単純な善悪二元論に陥ることなくほどよくミステリーを追う展開が続く。エンディングも簡単な結論・カタルシスに回収させずに終わっていくことは、既存の歴史を扱い伝えようとする作品として高く評価できる。

一方ゲームとしての遊びの部分は非常に簡易で、万人向けのアドベンチャーとして仕上がってはいるが、This War of Mineのようにゲームプレイがストーリーテリングと結びつく作りにはなってはいない。むしろ既存の簡素なステルス・アクションに寄せたゲームパートについては、空襲の中を平然と歩き回るなどのプレイができることにより、作品の美点であるリアルさを削ぐ結果となっている。



本作は、Varient HeartsSvoboda 1945など実際の歴史としての戦争を体験・回想させるゲーム作品群の中でも、少女と犬を主人公に据え理解・共感しやすいストーリーを添えてポピュラーな形に落とし込むことで体験の敷居を低くするとともに、東アジアを舞台とする貴重な作品となっている。

さらに、各種専門家による多くの時代考証、日本人含めた事前テストプレイ・フィードバック、英語・中国語(簡体字繁体字)・日本語に加え韓国語を追加対応した言語対応などの取組みを通じて、東アジア圏で歴史を共有しようとする試みをゲームへと明確に反映させている。

 

現代において、ゲームもまた戦争を語るメディアである。悲惨な出来事は現在進行形で発生し続け、渦中で出来事を語るのは難しく、過去の出来事を語る人々は時と共に消えてゆく。それでも2023年に戦争をゲームで誠実に語ることを考えた時に、80年近くの時を経てなお忘れずに新たな形で語ることができるのだと、ひとつの可能性を示した作品として本作を薦めたい。

store.steampowered.com

台湾メディア「The News Lens 日本語版」による開発者インタビュー。詳細なインタビューにより複雑な開発経緯や本作に込められた思いが語られる。

japan.thenewslens.com

 

※2024年3月追記

現在進行中の戦争・紛争を描くゲームとして、キーウのゲームスタジオで作られたUkraina War Stories(2022年10月リリース、無料、日本語対応)、ガザの子どもたちを描く詩を題材とした小品Oh Rascal Children of Gaza(2024年2月リリース、無料)などがある。

実体験ベースの戦争ノベル『Ukraine War Stories』では、日本のプレイヤーが世界最多。その理由を開発者に訊いた - AUTOMATON

【Oh Rascal Children of Gaza】ガザの子どもたちに寄せた詩をプレイして体験するゲーム - YouTube(ゲームライターのドラゴンワサビポテト氏による紹介動画)

 

 

ふりかけ☆スペイシー

こういうゲームもありうるんだというオルタナティブなゲームの可能性を示す作品。

サブカルへの執着、糸井氏への個人的な愛憎、独特なセンスなど大きく人を選ぶ要素が強く、自分自身も作品にノれたとは言い難いのですが、それでも大量の小ネタとテンポの良い展開、豊富な演出で最後まで興味深く遊ばせる力のあるノベル?アドベンチャー?ゲームです。

なぞの開発経緯が語られる葛西氏による開発者インタビュー

 

一番の特徴であるサブカルノンポリパロディ・風刺描写は、攻撃的でありながらも隙とチャーミングさが勝ち、根強いファンが多いのも納得の出来。今後発売されるシリーズ2作目では、実際に取材に行った東南アジア各国を舞台にするということで、良く言えば濃厚、悪く言えば内輪的だったテイストが、海外という他者に触れてどう変わっていくのか楽しみなシリーズとなっています。さらに、Switchへの展開や多言語化(ふり☆スペの翻訳とは?)を目論み、今後のシリーズ展開に向けた意欲も十分。

 

無謀なまでに社会に切り込もうとした昭和の前衛芸術の熱をすこしだけ感じさせてくれるネオ昭和の世界、日本のゲームでこの作品だけが持つ怖じない風刺と奇妙な脱力感でこれから何をどう表現するのか、ますますのシリーズ発展を祈念してお薦めします。

store.steampowered.com

 

※2024年3月追記

パルワールドという日本発のパロディ・風刺色が強い作品が様々な議論を呼びつつ世界的スマッシュヒットを飛ばしているので、ちょっとパロディに対する風向きが変わってくることもあるのかなと思っています。パルワールドが作られたことの意義や批判については、こちらの議論が深掘りしていて、とても興味深かったのでおすすめです。

出るべくして出たのか!? 話題沸騰『パルワールド』を徹底的に語り合う:#380 しゃべりすぎGAMER - YouTube

 

 

あとがき

令和ビデオゲームグラウンドゼロ」は葛西祝氏主催のオルタナティブなゲームメディアというコンセプトでゲームを紹介・批評するメディアです。

よそさまで話すということで、いろいろなレビュー・感想を読むのが好きなこともあり、様々なレビューや議論を引用しながらいつもと少し違うスタイル・方向性で書けて楽しかったです。

このたびの機会をいただけたことを改めて感謝いたします。

繰り返す死はコンタクト「Disc Room」紹介

見知らぬ惑星で死ねない体となり進化する謎の円盤と対峙する避けゲーかつ死にゲー

遊びやすいアーケードスタイルのアクションゲームだけど、同時に未知の存在と人間の邂逅を描く素晴らしいハードSFでした!

非常に気に入ったのでSteamレビューに加筆してブログにも置いておく。

 

作り込まれたストイックかつ快適なアクションゲームと硬派なSFエッセンスがコンパクトにぎゅっと詰め込んである小粒良品。特に、小説・映画「2001年宇宙の旅」やスタニスワフ・レムソラリス」やストルガツキー兄弟「ストーカー」等のすこし古めのSFが好きな方には強くおすすめ

ひととおりクリアまで2~3時間、ハードモードや謎解きまでやりこむと4~5時間程度。開発にはMinitとSLUDGE LIFEのチームが参加していて、ミニマムで奥深い語り口はもちろん、アートワーク・音楽もすごくクール。

Steam/Switch/Xbox

www.youtube.com

 

(ゲーム内容)

シンプルに刃のついた円盤を避けるだけのステージ制ゲームで、攻略条件を達成することでステージを開け、先に進んでいく。途中でアビリティが解放されたり、入り組んだ解放条件や、謎めいた部屋が出てきたりで、クリアまで飽きずにプレイできる。特殊な条件下や謎解きでしか出現しない部屋・円盤もあり(クリアするだけなら不要)。死にゲーなので何度も死ぬことが前提だが、リプレイはスムーズかつ操作性も快適で、ストレスはほぼない。ステージを進めていくと、ストーリーを描くコミックが解放される。60種類ある各円盤で死ぬと解放されるアーカイブ・短い主人公の独白も興味深く、死ぬことに意味があるのも好印象。

最初は難しく感じるが、何度も死にながら円盤をしっかりと観察すれば進むことができ、普段アクションゲームをしない自分でもちゃんとクリアできる難易度だった。
ノーマルモード解放後に遊べるハードモードは単調なので、難易度下げてさくっとクリア。

たくさんの条件をクリアしながら、いろいろなディスクとたわむれよう!

 

(本作の特徴・魅力)
本作のなによりの魅力はストイックなアクションにより探究していく、この残酷で謎めいた円盤とのコンタクトの物語だ。

残酷なだけでなく、意思を持つようにも、主人公を試しているようにも見える円盤。何度も死にながら、攻略のために円盤たちの動きや特徴を知ることで、プレイヤーはやがて円盤と一体化したような感覚を抱いていくだろう。なぜ円盤は現れたのか、なぜ主人公を死に至らしめるのか、なぜ何度も生き返り円盤に殺されなければならないのか、この残酷な死に満ちた探究の先に何があるのか。円盤はなにも語らないが、物言わぬそれらと対峙し、何度も死んで観察し、予測し、行動することで何かがわかるかもしれない。

ボイジャー探査機のゴールデンレコード」を知っているとより楽しいかも。

メッセージ

 

アクション同様にストーリーの語り口も非常にストイックで、文字や台詞での明確な説明は一切ない。人によってはなにもわからないまま終わりかねず、そこは好みが分かれるだろう。けれど、容赦のない試行と探求を繰り返しながら、アクションと死を通じて円盤を知り謎の存在とコンタクトしていく感覚は、ほかのSFゲームでは味わうことのないこの作品だけにしかないものだと思う。

ノーマルモードをクリアして黄金の部屋の謎解きをしたのちに見たもの、知り得ぬ知性とふしぎなコンタクトをした感覚、最高にSFでした!

科学者として観察を続けながら徐々に常軌を逸していく円盤図鑑の主人公の独白、コミックですこしだけ語られる主人公ら人間たちのドラマも言葉少ないまま想像させられるものがあり、とてもよかった。

円盤辞典(当該円盤で死ぬと読める)内の主人公の独白により、世界の謎を探っていく

主人公たち人間のドラマを明かすコミックも短いながら味わいがある

 

(難易度・アクセシビリティ

アクションとしての難易度はそこそこ高いが、難易度設定は項目豊富で、いつでも変更可能なのでアクション下手者でもクリアまで楽しくプレイできた。

アクセシビリティ関連も非常に充実しており、グロ苦手な人向けに血を透明にしたり紙吹雪にしたりする設定もありで、この規模のゲームとしては至れり尽くせり。アクション苦手な人も残酷描写はちょっとという人も、ぜひ気軽にプレイしてみてほしい。なぞの知性とのコンタクトは多くの人に開かれている。

automaton-media.com

 

 

 

コンパクトでよくできたアクションゲームやSF要素のあるアドベンチャーを気軽にプレイしたい方におすすめ。

特に、コンタクト系SF好きには強くおすすめします。あなたの求めているものがここにある。プレイしよう!

Steam/Switch/Xbox

 

(参考) 開発者インタビュー

www.gamespark.jp

繰り返す死はコンタクト。生も死もすでに意味はなく、その先にあるものを見にいくだけ。

 

「0号線沿い、悲しみと恵み」 Kentucky Route Zeroコラム翻訳

前書き

Kentucky Route Zero に関するコラム「Grief and Grace Along Route Zero」(Perry Gottschalk氏執筆、ゲームメディアUnwinnable掲載)を読み、とても感銘を受けたので日本語へ翻訳しました。

アメリカという国においてKRZがどのような意味を持つのかという一端を示すとともに、KRZに流れる感情を哀切に表した、悲しく美しいコラムです。

 

翻訳・掲載に関して、快く許諾いただきましたPerry氏及びUnwinnableに深く感謝いたします。(リンク

unwinnable.com

 

 

翻訳

0号線沿い、悲しみと恵み

Perry Gottschalk、2024年1月19日



 

2022 年 8 月、モンタナ州中部。私たちはこの地を去った。

 

私がこの場所に来たのは何年か前、地元の大学の学位取得までわずか数単位を残して中退した後、目的もなく、いつまでもレストランや小売店で奇妙な仕事をする運命にあるように思いながら、シカゴから移住してきたときだった。妻との出会いはそんな仕事の最中、よりにもよってレンタルビデオ店だった。こういう店は10 年以上前から潰れ始めていたが、この小さな山間の町は周囲を取り囲む広大な山脈のように動じることなく、そのささやかさを守り続けていた。自分の抱えるものに根ざしたカルチャーにあまり共感できない人であれば、それを「停滞」と呼ぶだろう。

しかし、町は変わった。数十年分の進歩が一瞬にして町を襲ったのだ。どんな理由であれ、私たちの家は私たちの知らない人々に浸食された。それは、カウボーイめいた幻想を実現させようと目を輝かせながらイエローストーンを見上げる人々であり、「未開拓」のものに新たな可能性を見出す裕福な投資家たちであり、額に汗して働くことよりお金が重要視されることのなかったこの場所にやってきたお金だった。

私たちは、自分たちが愛した町が苦しみ喘ぐのを目の当たりにした。この地にい続ける余裕のあった人々は皆、これを苦々しく思っていた。彼らは、地元経済に還元しない人々の利益のために、自分たちの友人や家族が手が出せないほどものが高騰したことに腹を立てていた。次は自分たち、モンタナ人 4 世や 5 世である自分たちがそうなるのではないかと怯えた。初めて「この町は、昔とは変わってしまった」という感情が、単なる懐古主義ではなく、現実のものとなった。レンタルビデオ店もついに閉店した。家賃が倍にまで、そしてさらに値を上げるのを見た。

 

私たちは去った。そして、馬を埋めた。

 

私がケンタッキールートゼロに出会ったのは、それが開発されている7年の間ではなく、モンタナ州を離れた後のことだ。自分自身の属する場所から追い出された後、私はこの物語の鏡鑑のなかへと避難した。

そこには、自分たちの力ではどうすることもできない、理解することもできない経済状況によって、残酷な目に遭う登場人物たちがいた。より豊かな生活を約束しておきながら、その豊かな生活が自分たちだけのものであるという事実を隠蔽し、コミュニティに侵入してきた力、その力によって文字通り日陰に追いやられた者たちが。私は、自分が認められたように感じた。

怒りも感じた。自分が築き上げてきた人生を失う苦しみが、私のディスプレイに映し出されていた。私は銀行による立ち退き処分によって家を引き裂かれた少年、エズラのことを思う。通り沿いに見かけた空き家、もうすぐAirbnbに掲載されるだろう空き家を思い浮かべる。そして、そこに住んでいた家族のこと、彼らの息子にもまたジュリアンという名の鳥がいたのではないかと思う。ゼロ号線は、アメリカ南東部から1700マイルも離れた私が住んでいた場所にまで、コンクリートの牙を剥き出しにやって来ていたのだ。

 

ただし、この考えはゼロ号線が何であるかについて根本的な誤解となる。それは経済に組み込まれることが地域社会にもたらす、過酷な共鳴ではない。ゼロとは、その跡に残された繋がりのことだ。ゼロは置き去りにされた人々のためのものであり、残された人々のためのものだ。コンウェイはドッグウッド・ドライブ5番に配達をするなかで、テレビの修理工、アンドロイドのミュージシャンたち、そして小さなエズラなど、さまざまな人々と繋がりを結んでいく。コンウェイは、この土地を枯らしてしまった企業に打ち捨てられた哀れな人々に出会う。彼は、コミュニティを見つける。私が自分の中にゼロを感じたのだとしたら、それは怒りではない。それは、芽生えゆく共同体だった。

ゲームの4つ目の幕間劇『Un Pueblo de Nada』では、コミュニティTV局WEVP-TVの最後の放送を見ることになる。幕間劇の名前を訳すと「何もない町」となる。この町の住民たちになんてびったりだろう。彼らをそこに強制的に連れてきた統合電力会社にとって、ここは何もない町なのだ。放送中に嵐が町を浸水させたとき、比喩的だった「プエブロ・デ・ナダ」はまさにその名の由来の通りとなった。すべては水の中に失われた。

もちろん、人々を除いて。コミュニティを除いて。私たちがゲームを通して追ってきたキャラクターたちは、強欲と洪水を生き延びた人たちと出会い、町が復興するにつれて新しい繋がりが形成される。彼らは時間をかけて失ったものを悲しむ。洪水の犠牲となった地元の農場の近くの馬、その避難場所であった納屋が彼らの墓となる。そして人々は、自分の未来を決断する―この町に留まり再建するか、それとも次へと進むのか。彼らはドッグウッド通り5番を見つける。

 

"そして、私たちは馬を埋めた"

 

馬たちは新しくできた墓に横たわり、二度目の難民となった者たちが別れの賛美歌を歌う--『I'm Going That Way (私はそこへ行く)』。教会では、この賛美歌は天国への希望を示すものとして歌われる。おそらくゼロの周縁に住む人々にとってもそれは同じなのだろう。この言葉には、ゲームのほかの場面でも見られる意味が込められているのかもしれない。物事とはそういうものであり、私たちにできるのは進むことだけ。

私たちが歩む道は、天国へ続くものではないとしても、これまで歩んできた道と同じように、未知の遠いところへと私たちを導いてくれる。最初のバースが終わりに近づくと、馬に別れを告げるように影のような人影が現れる。彼らはそのまま死者の幽霊なのではなく、ゼロ号線沿いに流れていった時間、文化や生活に関わった人々の魂のように見える。彼らは賛美歌に加わり、ゲームは幕を閉じる。美しい瞬間だ。

 

続いていく人生の中で、私はよく、このシーンのことを考える。それは私が置き去りにした山間の町に慰めを与え、私はひとりではないということを思い出させてくれる。馬に安息を与えるためにやってくる魂は、私が前に進むのを手伝ってくれる。その魂は、私が別れを告げた人たちかもしれないし、私より先に旅立った人たちかもしれないし、その両方なのかもしれない。彼らはまだここに、私のそばにいる。私が背負ったのは重荷ではない。ともにいる人々だ。

 

この夏、妻と私は子供を亡くした。こういうことに対する悲しみは、言葉にならない。感情は引き裂かれる。私たちは涙を流し、流して、そしてまだ悲しみの中にいる。

どうすればいいというのだろう?

ひとは馬を埋める。

喪失はいつもそこにある。あなたのいる場所にも。そこにはすでに悲しみを経験してきた人々がいて、あなたを愛する人々がいる。

ともに、馬を埋める。

 

馬を埋める

 

 

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Perry Gottschalk氏はコロラド州在住のライターで、ゲームとゲームが私たちに引き起こす感情について考えています。より多くの感情を知りたい方は、@gottsdamnをフォローしてください。

2023年に遊んだゲームのミニレビュー・感想

小粒の海外アドベンチャー多めでジャンル雑多。

翻訳mod作成したFAITH以外だと、特にお気に入りは“SLUDGE LIFE1+2”と“ULTRAKILL” 短編だとnovena”とCoastal Town+赤道の旅かな。今年もたくさんの楽しいゲームを遊ばせてもらえてよかったな。

そして、みんなリスをホチキスして神に会おう!

人生はSludge Life

 

ミニレビュー・感想

SLUDGE LIFE 1+2

 

Immortality

 

寄居隅怪奇事件簿: Hermitage

 

ふりかけ☆スペイシー

 

Cofee Talk1,2

 

SNKRX

上記ツイート、開発者のa372exさんに「いいね」もらっちゃった。やったね。

 

Nightmare Zapping

 

Milky Way Prince

STEAMレビューも書いた。

 

FAITH: The Unholy Trinity

 

三伏

Steamレビューも書いた。

 

ULTRAKILL

最低難易度なら自分のようなFPS素人のガチャガチャプレイでもほぼリプレイなしで進行可能。
さらにオートエイムや被ダメ・ゲームスピード調整などアシスト機能も充実なんで、機械キャラやなぞめいた雰囲気好きなら気軽に手を出してもいいんじゃないかな。


Night Call

Steamレビューも書いた。

 

Dome-King Cabbage (demo)

 

リスホチキス(Squirrel Stapler)

おまけ

 

RefindSelf

 

HAZAMA_QUEEN

 

台北大空襲

 

GHOSTED

Steamレビューも書いた。

 

Slime 3K

 

Mediterranea Inferno

Steamレビューも書いた。

 

ファミレスを享受せよ

 

The Cosmic Wheel Sisterhood

 

 

1時間以内の短編ゲーム

novena

 

Clawfish

 

NO ME - The Future Is ours

 

Purrfect Apawcalypse1,2

 

Coastal Town+赤道の旅

 

Locke(d)

 

Beary the Hatchet

 

EL NE RUE

 

She Vomited guns

 

潮汐少女:現象

 

上に天井がある。

 

I will blow up THE EARTH MUAHAHAHAHAHAHAHA!!!

 

He fucked the girl out of me

 

ルビを振るゲーム

 

GUBBINS

 

 

 

 

ちょっと長い感想文

Scorn

Scornとハッピーエンド

 

FAITH: The Unholy Trinity

FAITH: The Unholy Trinity、あるいは救えなかった者たちに手向けるもうひとつの三位一体

「神はなぜエイミーを助けなかったのか」という神学的問題に対する回答試案

エイミーの視点から描いた二次創作「あなたや私と同じ普通の少女の話」

 

SLUDGE LIFE 1+2

グラフィティによるストーリーテリング、あるいはタガー達に捧げるラメント

 

冬におすすめ小品ゲーム3選

冬、ささやかなぬくもりを求めるあなたにおすすめのゲーム「Voyage」「Little Inferno」「HIGH HELL」+α

 

 

 

私家翻訳関連

日本語で遊べるように私家翻訳したゲームもご興味あれば。

今年は8月にKentucky Route ZeroがPC版・コンソール版に対応しました。よかったね!あと、FAITHの日本語modとリスホチキスの翻訳テキストを作りました。来年なにかするかは未定です。

 

なぜかゲームメディアのGame*Sparkさんがインタビューしてくれて、話したいことを話したいだけ話してきたので、よろしければご覧ください。

Kentucky Route Zero

マジックリアリズム等の手法を用いた美しいテキストと精緻な演出で描く、最後の配達から始まる幻想的でリアルで不思議な旅、10年に一度の傑作ともいわれるADVをぜひプレイしてみてください。

Kentucky Route Zero: PC Edition

Kentucky Route Zero: TV Edition

iOS版/ Android版Netflix加入者は無料)

 

FAITH: The Unholy Trinity

そしてIndie Speedrun SummitでFAITH日本語mod使用で走っていただきました。すばらしい機会をいただいた走者のポールさんと解説者のきじまさん・MothuBGさんに感謝!

 

 

 

昨年・一昨年の分はこちら。

冬、ささやかなぬくもりを求めるあなたにおすすめのゲーム

冬にぴったりな小品3つをご紹介します。

どれもセール時には数百円程度、2時間程度で気軽に遊べるゲームです。ご興味ありましたら、ささやかな暖かさをくれる作品たちをぜひ手に取ってみてください。

本記事は「ゲームとことば Advent Calendar 2023」12月5日分として作成しました。

 

 

Voyage

ふたりの、君への旅

 

精霊満ちる惑星に取り残されたふたり、どことも知れぬ家へと帰るためのふたりきりの旅を描く短編ADV

情感豊かなビジュアル、可憐なサウンド、暖かみあるモーション、文字を使わず寡黙で想像させるストーリー。

スウェーデンで開発された本作は、ひんやりとした空気感と暖かみある手描きのビジュアルを特徴とし、良質なアニメ映画のなかを進むような体験ができます。

 

Pikuniku、Lovely Planetや OMORI(PV等)のコンポーザーであるCalum Bowen (bo en)氏による、かわいらしく爽やかでどこか寂し気な音楽もまた、感情豊かに本作の雰囲気を彩ります。

 

そしてなによりこのゲームの魅力は、いつでもお互いをハグできること。言葉を交わさない主人公たちふたりが抱きしめあうこと、それは他にだれもいなくなってしまった惑星で互いの存在を確かめ肯定する大切なジェスチャーです。

そんなふたりと短かくも美しい旅の終わりを見届けるとき、きっと満足した気分でゲームを終えることができるはずです。

 

本作はマルチプレイ対応。かんたんで誰でもプレイできるので、よければお友だちやご家族と一緒にプレイしてみてください。少し切なく、あたたかいコミュニケーションは冬のマルチプレイにぴったりです。

セール時なら75%オフ380円程度と大変お得。

PVを見て気に入ったならぜひウィッシュリストに加え、ふしぎで忘れがたい惑星の旅をお楽しみください。

 

 ※日本語対応

 

 

Little Inferno

ちょっとわるくて愉しい火遊び

 

冬、冷え切った心と身体を暖めてくれるものといえば暖炉。

Little Infernoはぬくもりを得るため、暖炉にいろんなものを投げ込み燃やしていく火遊びゲームです。

 

燃やすものはオモチャや日用品といった常識的なものからはじまり、バスや爆弾までスケールアップして100種類以上。燃やすとトウモロコシがポップコーンになったり、時計が爆発したり、どれも全部反応が違ううえ、あっという間に焼け落ちるので、触っていて病みつきになる楽しさがあります。

さらに、燃やすものの組み合わせで発生するコンボを見つけるのも楽しみのひとつ。

コンボを推測して燃やすもよし、目についたものを片っ端から燃やすもよし、憎いあいつを燃やす(自PC内の画像データも燃やせる)もよし、数時間のストーリーエンドまで興じることのできる火遊び体験は、ちょっとマッドでダークな愉しみです。

自分も燃やせる

通販で手に入れる燃やすものカタログの商品説明もブラックなユーモアにあふれて読みごたえあり。日本語対応なのも安心ですね。

他人のクレジットカードは燃やそう!

クレジットカードも家族写真もインターネットも全部燃やして、今年の冬を暖かく乗り切りましょう!

 

iOS, Androidでも遊べます。

 

 

HIGH HELL

腐った街で悪を燃やし尽くすシンプルFPS

 

悪徳と堕落はびこる街の悪魔崇拝カルテル経済を破壊せよ。

言葉は要らない。

扉を蹴破り、敵を殲滅し、無垢の山羊を救い、悪徳の札束を燃やし、目的を達成しろ。

ロード中は強欲のミニゲームで遊べ。

敵を撃ち、札束を浄化しろ

ミニゲームはぜんぶで20種類

 

燃やせ。

悪党どもを。腐った金を。ふざけた人形を。忘れられない過去を。地に堕ちた己が魂を。

燃やせ、すべてを。

BURN EVERYTHING.

 

※日本語対応

 

 

最後に

楽しんでいただけましたでしょうか。

あなたがこの冬をゲームと共に暖かく過ごす助けとなりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

ところで、あなたはリスをホチキスしたいと思ったことはありますか?

寒い冬から救われたくはありませんか?

DUSKやGloomwoodを手掛けたDavid氏による奇想短編ホラー『Squirrel Stapler』(リスホチキスどめ)ならあなたの願いが叶います。

森でリスを狩り、腐乱死体となった愛しい人にホチキスして貼り付けましょう。

静かな青空のもと、耳を澄まして森を感じましょう。

神に会いましょう。

 

おすすめです。

※コミカルですが恐怖表現を含むため、プレイの際はご留意ください。

 

メインテキスト翻訳あり

ashi-yuri.hatenablog.com

 

 

FAITH: The Unholy Trinity、あるいは救えなかった者たちに手向けるもうひとつの三位一体

 

 

ひとは簡単に救えないということについて。

 

はじめに

FAITHのテキストを翻訳したり人物相関図を作るのをお手伝いしながら、エンディングや登場人物について考えたことをまとめた感想文です。適宜、作中メモや開発者airdorf氏のインタビューの引用・翻訳を挟みます。

※全chapter・全EDクリア前提

※このテキストは何の事実も保証しない

created by ashi_yuri & arpanetscape

 

※ゲーム画面は非公式日本語modを使用



救えなかった者たち

自分にとってFAITHが結局どういう話だったかというと、「ジョンがエイミーを救えなかったことを認めるまで」の話だと思っている。それはGood EndingでもBad Endingでも一緒だ。

「君を救うことができなかった」

※エイミー、マーティン家と悪魔祓い事件の経緯はこちらを参照

 

前の記事で書いたとおり、悪魔祓いの前からエイミーの家庭環境は荒廃していて、その隙間にカルト教団が入り込む形で、エイミーは悪魔憑きとなってしまう。世俗の人々もエクソシストもだれもエイミーを救うことはできず、ゲーム開始時点ですでにエイミーは顔をくり抜かれて悪魔の器となっている。

この結末、エイミーが悪魔の器となる運命を決定したのはジョンだ。少なくともジョン自身はそう感じているかのような行動をとる。悪魔に圧倒され、恐怖に負け、エイミーを救わないまま逃げ出すと選択したことを、ジョンは過剰なまでに悔いている。

この罪の意識、どうしようもない罪悪感と後ろめたさが、妻を置いて自分の命を省みずにマーティン家へと舞い戻り、終わらなかった悪魔祓いを再度始める理由、悪魔に満ちた暗闇の中を十字架ひとつで進む狂気じみた悪魔祓いの原動力だ。強迫観念につき動かされるように、ジョンはひとりで進み続ける。エイミー、そして罪悪感からジョン自身が作り出した偽りの救済対象である双子を助けるために。

けれど冒頭に書いたとおり、すべてははじめから手遅れであり、当然その願いは叶わない。もう救えない者をそれでも救いたいと願い続ける矛盾と苦しみが、この作品のアンダートーンとして重苦しく流れつづけている。

というわけで、この作品はどうして、そんなにまでして誰かを救いたいのかなあと思ったのでこの感想文を書いている。

 

 

三人の母親たち

相関図を作ってて気づいたけれど、エイミー、ゲイリー、ジョンの3人の主要登場人物には、わずかにだけ言及されている母親がいる。その3人の母親はみな、悪魔の器や悪魔憑きとなったり精神が疲弊していたりとかなり異常なことになっている。

 

シンディ

エイミーの母のシンディは、双子の息子を流産で亡くしている。彼女は息子の死を認められず、双子の誕生会を開いたり想像で双子と暮らしている日記を書いたり、双子の依り代として謎のマネキンをたくさん置いたりして、双子がまだ生きて戻ってくるかのように振る舞っている。父親のボブもシンディに寄り添って精神科の治療に同行していたようだけれど、一方で仕事で家を離れがちで、それによりシンディは強い不安状態に陥っている。さらにボブは、怪しげな迷信じみた人形を送ってきたりすることで、シンディの思い込みを加速させるような行動を見せる。このように、マーティン家は悪魔が憑く前から明らかに様子がおかしく、機能不全に陥っている。

家族の肖像

祝う人も祝われる人もいないはずのお誕生日会

エイミーは森の一軒家で学校に行かせてもらえず隔絶状態にあり、中絶手術も行う婦人科クリニック(ゲイリーの教団が運営)でボランティアをはじめている。この活動はおそらくカトリックのご近所さんに嫌がられており、メモにもそれらしい描写がある。

このようによくわからないところもあるけれど、とにかくマーティン家の家庭内がゲイリーの教団と接触する前から荒涼とした状況であったのは想像に難くない。

「呪われた」家

ちなみにChapter3のジョンによるマーティン家回想シーンには、家の至るところ怪しげな母親の影で満ちているシーンがある。加えて、双子部屋は思い出せないものとして描写を避けられている。ジョンはシンディの状況が家に暗い影を落としていることも、双子の部屋が普通ではないことにも、本当は最初から気づいてたんだと思う。

マーティン家玄関回想・左隅にシンディの影(他の部屋でも同様)

双子部屋の前「なにも思い出せない」

 

ミリアム

ゲイリーの母にあたるミリアムは、自ら望んで自分の顔をくりぬかせて悪魔の器となり、できた穴(地獄への門)に赤子を通すことでゲイリーを生み出した恐ろしい女性だ。

ミリアムの肖像(教団本拠地にて)

Chapter2のPrologueで少しだけ彼女、シスターベルことミリアム・ベルについて語られている。彼女は孤児院にやってきて献身的に働いたのち、6人の子供を悪魔の贄として捧げる事件を起こす。子供たちは惨殺死体として発見され、この事件を調査にやって来たクラーク神父もまた、教会の地下室で悪魔に出会い発狂して死んでしまう。この事件の後、教会の地下への道は封印されたらしい。

 

Chapter2 プロローグのNoteより

その時、礼拝堂から大きな物音が聞こえてきた。そこに行ってみると、ミリアムがあ
の子たちを地下に続く階段へと引きずりこむ瞬間を目撃した。私は銃を抜いたが、クラーク神父が止めた。
神父は神の御業について口にしながら階段を下り、階段の口を封鎖してしまった。階段はこちら側からは開かない。私はただ待つことしかできなかった。階下から聞こえてきた異音はとても言い表せない。だが、ひとつだけ確かに言えることがある。

悪魔は実在する。

 

なにがあってシスターの身でありながら悪魔の器となろうとしたのかはわからないけれど、めちゃくちゃキリスト教の世界を憎んでたんだろうなと思う。

ゲイリーは母であるミリアムを教団の礎として、その意志に従って行動している。はっきり言えば、ゲイリー以上の本作の諸悪の根源だと思う。こわい。

最難関ボスの一角のミリアム(いまやゲイリーより強い)

 

メレディス

そしてジョンの母のメレディス。彼女についてはChapter1のメモ及びChapter3のジョンとエイミーの会話で少し触れられている。どうやら心を病むかなにかして、悪魔憑きとなってしまったらしい。ジョンはリサと孤児院にいたことが示唆されているので、メレディスはジョンが幼いときに、なにかしらの理由で亡くなるか養育不能の状態になってしまったのだろう。

悪魔は自分を祓おうとする者の心の弱みを見抜き利用する。悪魔に憑りつかれたエイミーが見抜いたように、メレディスを救えなかったことは、たぶんジョンにとって大きな心の傷になっているのだと思う。

Chapter3 エイミーの台詞

メレディスはどうだった?あの人は良くなった?

 あなたは彼女を救えなかった。あの人はいま、私とおなじところにいるんだよ」

 

エイミーとゲイリーとジョン、主要登場人物の三人はそれぞれ絶望に満ちて悪魔側に取り込まれてしまった母親、救えなかった母を持っている。

その絶望の先で、エイミーは家庭環境の隙間につけこんだ悪魔により、両親を残忍に殺害し家族を終わらせる。ゲイリーは母親の意志を継ぎ、救えない世界を混沌で満たすため「第二の死」をこの世にもたらそうとする。そしてジョンは、メレディスもエイミーも救えないまま、ずっと迷いながら十字架ひとつを頼りに闇の中を歩き続けている。

救えなかった母を持つ三人の子どもたち、その三人がそれぞれの救いを求めて織りなす物語が、FAITHというゲームの奥には横たわっている。


救いと悪魔祓い

では、『救う』とはなにをすることなのか。この作品でそれは「憑いた悪魔を祓うこと」を指している。エクソシストを描くジャンル作品では、えてして悪魔は辛いことや悲しみや憎しみや弱さなど心の隙間を捉えて、人間に取り憑く。そして負の感情が純粋であるほど、その感情が深ければ深いほど、悪魔は強くなる。

 

Chapter1の時点でエイミーはすでに悪魔の器とされてほとんど救いようがない状況にある。様々なゲーム内資料・状況を総合するとエイミーの状況経過はこんな感じ。

(エイミーが器になるまでの流れ)

  • 家庭が機能不全状態となっているエイミーに対して、カルト教団は正体を隠して近づき、団体が運営するクリニックのボランティア活動に勧誘する。
  • ゲイリーがエイミーに悪魔の器としての適性を見出す。
  • (教団の介入により?)エイミーは悪魔憑きとなる。
  • エクソシストによる悪魔祓いが試みられるが、失敗。エイミーはオルレッド神父を素手で絞殺し、その後両親の腸を引きずり出して絞殺する。
  • ジョンは現場から逃走し、警察が到着した後、ジョンとエイミーは精神病院に収容される。
  • 事件から1年後、エイミーが精神病院から逃走。カルト教団の信者たちに捕まり、悪魔の器とするための儀式が始められる。
  • 幻覚・麻酔作用のある注射を打たれる。
  • 仮面をかぶせられる。(おそらく内側に顔面を麻痺させる薬が塗られている)
  • 儀式用のナイフで顔面をくりぬかれる。
  • 器となったエイミーはどうやってか逃走し、マーティン家に帰りつく。

 

ふつうの17歳の少女だったはずなのに、家族も希望もすべてを失い、顔をえぐり取られて人間としての尊厳までぐちゃぐちゃに破壊されたエイミーのことを考えると、ほんとうにつらい。Chapter1のエイミーがばかみたいに強いのも、おそらくそれだけ絶望と憎しみが深いことの表現なのだと思う。

Chapter1のエイミー出現時音声の台詞

「出テイケ!」「今スグ立チ去レ!」「裏切リ者!」「役立タズ!」「赦サレナイ」「虚無ダ」「見捨テラレタ」「モウ遅スギル」「我ハ罪ノ化身」「茨ノ冠」「全テノ希望ハ失ワレタ」「ソシテ地獄ガ来ル」「私ノ目ガ!」「血ガ流レテル」「アアアアアアァ」「オ前ガ見エル」「コッチヲ見ロ」「殺シテ」「ママ…?」

参考:FAITH wiki

何回Mortisさせられたか

そんな大きな憎しみと悲しみを抱えざるをえなかったエイミーに対して、恐怖心に捕らわれ、悪魔に向き合う強さを持たないジョンの祈りはまったく届かない。

1年前の回想時のジョンは、十字架を掲げてもエイミーにたやすく敗北してしまう。この悪魔祓い事件での失敗を機にジョンは精神病院に収容され、悪魔祓いが間違っていたと認め、一度は信仰を捨てる。

自分の意志で悪魔に対峙するため戻ってきたChapter1のジョンも、悪魔を退けることはできても祓うことはできない。

「その小さな棒きれを私に向けなよ」

エイミーに憑いた悪魔を祓いたいのなら、確かな信仰を持たなければならない。大きな憎しみと悲しみに捕らわれた者を救いたいのなら、どれだけ肉体が滅んでも闇を進み続けて強くならなければならない。自分自身の弱さや罪悪感や後悔を形にしたような悪魔に向かい、誰かを救えるということを信じ続けなければならない。十字架を、己の信仰だけを頼りに。

鑑の中の悪魔

地下室の悪魔

Chapter2 キャンディトンネル地下の暗闇にいる悪魔の台詞

「ヨウコソ、冒涜者ヨ」「手遅レダ、神父ヨ」「彼ラヲ取リ戻スコトハデキナイ」「子供タチハ永遠ニ我ノモノ」「子供ラヲ苦シメヨ」「ココダヨ」「ホラ、オ前ニハ捕マエラレナイ」

ごっこ悪魔

Chapter3 アパートの暗闇で追いかけてくる悪魔の台詞
「オマエノ秘密ヲ知ッテイルゾ」「モウ隠セナイ」「裏切リ者ガ!」「彼女ハ常二オ前ト共ニアル」

先の見えない闇のなか、たくさんの悪魔とカルト信者たちがジョンを襲う。ゲームプレイの中でずっと、罪悪感と信仰への疑念は悪魔へと形を変えて、強烈な悪意をジョンにぶつけて問うてくる。「弱く罪深いお前にだれかを救えるのか」と。

Chapter3 アパートの暗闇の中で十字架を失ったジョンに迫る鬼ごっこ悪魔

 

冒涜の安息日の当日、保育園地下の恐怖に満ちた暗く長い迷路の先で、ジョンはついに悪の根源たるゲイリーと出会う。

恐い!

死に至るような恐怖の中で、ジョンはようやくすべてを思い出す。恐怖に負け、白い存在と対話したこと。そして、エイミーを見捨ててあの家を去ったことを。

ジョン:主よ、助けてください。
ジョン:誰か、どうか助けてくれ。

??:汝の声を聞こう。
??:ジョン、人の子よ、汝の願いはなんだ?
ジョン:これは、私の身には余ります。私は怖ろしいのです。どうかこの場所から逃してください。
??:少女はどうする?
ジョン:私はただ帰りたいのです。
??:汝を安全な場所まで導けば…彼女の運命は汝の頭に封されるだろう。
ジョン:お望みならなんでもします。どうか、ここから連れ出してください。
??:誓いなさい。
ジョン:誓います。

なお、開発者のAirdorf氏は白い存在について、「コリント信徒への手紙二11章14節」を引き、あの存在は悪魔が天使を装ったものと示している

コリントの信徒への手紙二/ 11章 14節

しかし、驚くには及びません。サタンでさえ光の天使を装うのです。

日本聖書教会「旧約聖書 聖書教会共同訳」

天使の振りした悪魔のささやき

悪魔にそそのかされて(または、助かりたいという自分の弱さにより作り出した幻影によって)マーティン家から逃げ出し、救うべき少女を見捨ててしまったことをジョンは思い出す。それは自らの最奥に隠していた秘密だ。

そしておそらく、ジョンは母親メレディスに対しても、母親を救うことができなかったことを強く後悔している。彼はずっと己の弱さのせいで救えない人がいることを罪深いこととして悔やんでいる。

それでも神父としての道を選んだのなら、始めたことを終わらせなければならない。

死ぬほどの恐怖にもう一度苛まれ、ようやく自らの犯した罪と弱さに向き合ったジョンが今度こそ恐れずにエイミーを救えるかどうかは、これまでどんな道を歩んできたか次第だ。

「恐れるな、ジョン」



 

 

Neutral Ending

俺たちの戦いはこれからだED

ガルシア神父に叱られるにせよ、共に進むにせよ、エイミーは救われてないのでこれからも悪夢を見続けるのかもしれませんね。



Good Ending

悪魔の源となる場所である『坩堝』は結局、ジョンとエイミーが出会った場所、すべての始まりの場所であるマーティン家の屋根裏部屋に繋がっている。

ジョンは神の助けを借りて、待ち受けるゲイリーやマルファスたちと愉快で熱い激闘を繰り広げる。

おめでとうございます!穢れた三位一体が完成しました!!

穢れた三位一体を浄化し、夥しい数の死と迷いと恐怖に満ちた暗闇のなかを歩き続けた果てに、ジョンはついにエイミーのもとへたどり着く。その瞬間、なぜかエイミーの顔面は元通りとなり、そしてようやくここで、ジョンとエイミーの会話が成り立つ。

すべてはたったこの数ドットのために

ジョンは結局エイミーに対してなにもできなかったけれど、それでもエイミーを救うためにここまで歩んできたこと、救えないはずのものを救うために困難な道を進み続けてきたことそのものが、ジョンの信仰だ。

わたしの兄弟たち、自分は信仰を持っていると言う者がいても、行いが伴わなければ、何の役に立つでしょうか。そのような信仰が、彼を救うことができるでしょうか。

もし、兄弟あるいは姉妹が、着る物もなく、その日の食べ物にも事欠いているとき、あなたがたのだれかが、彼らに、「安心して行きなさい。温まりなさい。満腹するまで食べなさい」と言うだけで、体に必要なものを何一つ与えないなら、何の役に立つでしょう。

信仰もこれと同じです。行いが伴わないなら、信仰はそれだけでは死んだものです。

ヤコブの手紙 2:14-17)

 

日本聖書教会『新約聖書 新共同訳』より

今までどれだけ十字架を向けてもエイミーに祈りは届かなかったけれど、今度こそジョンの言葉はエイミーに届く。エイミーとジョンは数言会話したのち、悪魔祓いは終わる。

キリスト教徒ではない者の視点から率直に言えば、非合理的で頑迷にも見える一途な行い、それこそ信仰なのかもしれないけれど、それがようやくエイミーになにかを信じさせ、だからこそエイミーに巣くった悪魔を祓うことができたのだと自分は信じている。

たとえもう手遅れで、すべて終わっていたのだとしても。

 

どれだけ過去を悔いてもジョンの時は進み続ける。救えなかったことを受け容れ、それでも信仰を手に進み続けることで、ジョンはようやく前に進める。

この物語は、ひとつ始まりひとつ終わったことで終わる。滅びるはずのない悪魔と戦い続けるにしろ、平穏な生活を探し求めるにしろ、それはまたべつの物語だ。

CATECHISMS(教則)

 

 

ゲイリー・ミラーというふつうの人間

カルト教団の主導者として冒涜の安息日の実現を目指し、ジョンと敵対していたゲイリー。彼の出生は特殊で、生まれた直後に教団に拉致?され、自ら悪魔の器となったミリアム・ベルの顔の穴(地獄へのポータル)へと通されて、悪魔の洗礼を受けることで、神の子ならぬ悪魔の子としての運命を定められている。

ゲイリーは器となり切れなかった母ミリアムの遺志を継ぎ、地上への地獄の到来「第二の死」に向けて悪事の限りを尽くし、ひたむきに頑張り続けている。その姿は、私利私欲だけの俗物として描かれがちなカルト教祖と比較すると、ある意味カルトとして敬虔といえるかもしれない。

 

印象的なカルト教団の合言葉「ゲイリーはあなたを愛しています」"Gary Loves You"

この言葉で示す愛は、おそらくキリスト教における『愛』の概念を転用していて、教団内での兄弟愛・隣人愛、そしてゲイリーと悪魔からの無償の愛を説く。

ふつうに生きている人からすれば、この言葉は教団が信者を都合よく利用するための方便にすぎないことはすぐにわかり、馬鹿馬鹿しく聞こえる。けれど一方で、辛い現実に打ちひしがれ心の隙間をカルトに絡めとられてしまった人たちにとって、その言葉はどこか現実以外の別の場所へ誘うような、抗いがたい魅力ある言葉でもある。

 

Chapter2には、望まれない妊娠ののち子どもを失って傷心の女性、アル中の父親による虐待といじめで疲弊している子供などがゲイリーの教団に入信してしまったであろうことが記されている。

Chapter2 墓地で拾うノート①

赤ちゃんを失ったあと、私はまた医院の向かいで彼女を見かけた。(中略) 

私は彼女の後を追って、小道から森に入った。そして、ゲイリーと出会った。

Chapter2 墓地で拾うノート②

もう偉ぶったアル中の父親に暴力を振るわれることもない。傷やあざを隠さなくていい。薬も注射針もいらない。笑われたりいじめられたりすることもなくなる。二度とあいつらにあたしのことを笑わせない。

この視点は一貫していて、開発者が参照作品として明示しているアリ・アスター監督のホラー映画「ヘレディタリー/継承」でも、ふつうに暮らしていたはずの家族が偶然の事故や身内の不幸などから現実への不信を募らせ、荒唐無稽に思えるカルト教団・悪魔に徐々に取り込まれていくまでの恐怖、絶望、そして入信による悪魔的な高揚と救済を、現代的な視点から切実に描いている。

A24作品をはじめ、近年のホラー映画作品の一定数は、どんなに奇妙で禍々しいものであれ、その人の感じる恐怖や救いを求める気持ち自体は、客観的事実と同等あるいはそれ以上に切実で重要なものであることを鮮烈な恐怖表現を用いて描く。

エクソシストやリング(海外版)、パラノーマルアクティビティをはじめ、古今のホラー映画を参照するFAITHもまた、その流れに連なる作品だ。

FAITHの世界のどこかには、ティファニーをはじめゲイリーの愛を切実に必要としている人がいる気がする。だからこそ「ゲイリーはあなたを愛しています」という言葉は笑えると同時に恐ろしく、魅力的に響くのだろう。

 

閑話休題

 

坩堝の奥でゲイリーは彼の秘密を打ち明けてくれる。「ゲイリーはあなたを愛していません」という言葉が彼にとっての真実だ。それはずっと敵対してきた悪のカルト教団の礎となる『ゲイリーの愛』など存在しないという皮肉な真相でもあるし、彼の叫びでもある。

「父と子と聖霊」ならぬ「母と子と悪魔」として共に三位一体を形成し、愛を与えるはずの存在である二者、悪魔もおそらく誰より尽くしてきた母ミリアムも、誰もゲイリーを愛していないのだから。

ゲイリーはあなたを愛していません

最終決戦で、不気味で大きな赤子のような姿となり地面を這いながらジョンを追うゲイリーは、歪んだ「子」を体現するようだ。最後にミリアムの死骸とマルファスと合体して完成する穢れた三位一体「スーパー・ミリアム」(とは?)となるけれど、彼らは信仰の力を持つに至ったジョンに撃退されてしまう。

母なる存在を失い世界の救済に失敗したゲイリーは、完璧な器、彼に救いをもたらしてくれるはずのエイミーへと向かう。けれど、エイミーから手を伸ばした悪魔は「失敗作メ」とゲイリーを裁き、地獄へと飲み込む。これで、ゲイリーの物語は終わりである。

恵みのような血の雨が降る

〇〇はあなたを愛していません

悪行を尽くしたすえの当然の結末だけど、救済は訪れないし、ゲイリーはあなたを愛してないし、悲しいね。

(Chapter3 小屋内のゲイリーの手記より)

反キリストはすぐに現れるだろう。「第二の死」がこの世界を灼き尽くすだろう…
この哀れな肉の球体はまだ幼年期にありながら、救われるには果てしもなく遅すぎる。

 

Good Ending翻訳雑記

FAITHみたいな内面を掘り下げる系のホラー作品って、ともするとストーリーそのものが主人公の独りよがりと紙一重に見えるし、悪や救済をもたらしてくれるキャラクターも主人公の内面(罪悪感や願望・欲望など)を反映しただけのイメージに終始することがよくある。

そんな悩める一人相撲ものとして完成してるホラー作品も多いし、そういうのもすきだけど、自分にとってFAITHは一人の内面で完結する物語じゃない。

ゲイリーは単なる悪者という役割ではなくて、心が弱ったり現世に憎しみを持つ人をどこか惹きつけるような、現実のカルトが持つ怖さやそれを支える彼なりの信仰を持つキャラクターとして表現されているし、それはエイミーも他のキャラクターも同様だ。

できる限り、その苦悩や信念をテキストで表現できていたらいいのだけど。

 

Good Ending 最後の祓魔シーン

ジョン「エイミー、本当にすまない。君を救うことができなかった。」

エイミーの台詞

(原文)"John... It's okay. You've been so brave."

(最初の自分の訳)「ジョン…大丈夫よ。あなたはとても勇敢だったわ。」

救われない男が妄想する少女の台詞っぽくて好きじゃない。救済も妄想の産物では?

(完成版の訳)「ジョン…いいよ。あなたは本当に勇敢だった。」

なんとなく、エイミー自身がちゃんとジョンの行いを評価して赦した感じ。

自分でゲイリーを裁き、ジョンを赦したエイミーが最強

自分の好みだけど、加害者であり最大の被害者でもあるエイミーを絶対に主人公のための都合のよいキャラクターにしたくないし、どこにでもいる田舎の女の子が普通に持ちうる最大限の憎しみと強さを表せる台詞であればいいなと思ってる。

だからこそ、最後に一個人としてのジョンとエイミーのコミュニケーションが成立し、そこに救いがあると思うので。

 

Airdorf氏インタビューより抜粋・私家翻訳 38分頃から 

※Airdorf氏はキリスト教信者で、日曜学校の先生もしているとの話が前段にあり。

 

僕が赦しという概念について今まで経験したなかで最も記憶に残っていること、それは、ある友だちに対して本当に本当にひどいこと、とても悪いことをしてしまって、それでお互いの仲がすごくこじれて、ほとんど1年間口も聞けない状態になってしまったことがあるんだ。だけど、ようやく彼に電話する勇気を出して、僕はこれまでのことすべてが間違っていたと謝った。

彼はすべてを言わせず、「大丈夫だ。君のことを許すよ。」と言ったんだよ。

彼はキリスト教の信者ではなかったし、そもそも神が存在するかは分からないとつねづね不可知論者を自称していた。でも、その瞬間、彼に赦されたのだと知ったとき、キリストによりすでに罪を赦されていると予知されたときよりも強くなにか特別なもの、ひとと和解するということは本当に特別なことなんだと強く感じたんだ。

 

だからほら、うん、ジョンがエイミーと和解する瞬間が必要だと思ったんだ......それはすべて意味があるとは言えないかもしれない。エイミーは憑りつかれてるし、顔に穴が開いたままだから。だけど、昔の自分に戻ってエイミーが言うんだ、いいよと。私はこの人たちの犠牲者であり、それでもあなたはこの人たちを止めるためにできる限りのことをしたんだと。

時には、僕たちにはこの世界で誰か「いいよ」って言ってくれる人が必要なんだ。

 

 

Bad Ending

冷たく救いようのない現実がいちばん明確に見えるEnding。

Good Endingの坩堝の中ではうっすらとしか見えなかった「マーティン家はジョンが来る前からとっくに崩壊していた」という現実は、このエンディングでだけはっきりと見える。

ジョンが秘密の部屋に隠そうとしていたもの、足が遅い理由や双子が結局なんだったのかもこのEndingでようやくわかる。

Good Ending 坩堝の中のマーティン家(自分の周囲しか見えない)

Bad Ending 記憶の中のマーティン家(崩壊した家が明瞭に見える)

双子とは、双子を亡くしたマーティン夫人とエイミーを救えなかったジョンがすがり続けた「偽りの救い」なんだと思う。エイミーを救えなかった彼にとっては「双子を救うこと」、自分が誰かを救えるということがすがるべき救いだ。

この場面だけ急に双子の部屋が終着点になるのは、現実から目を背け、エイミーを見殺しにしたことを自らに隠蔽し続ける弱さ、偽りの救いを求めたその弱さこそが、救いのなさに繋がっていることを示しているかのようだ。

双子の幻影

双子の真相

双子の木偶人形を前に、ようやく「双子を救う」という救いはないことを悟り、絶望したジョンは、エイミーとマイケルという救えなかった子どもたちに手を引かれて器となり、「Damnatio Memoriae(記憶の抹消)」という最も重い天罰がくだされる。神父を自認し人を救い導こうとする者でありながら、自らの罪を認められずなにも為すことができないなら、それは当然受けるべき断罪でもある。

そして、マーティン家の惨劇もジョンの犯した罪も、知る人はもういない。

なにもない、はじめから

 

けれどこの作品のBad Endingは、彼の弱さと後悔と絶望に対して、作中でいちばん美しいテキストと音楽を添えている。

「この家に足を踏み入れたときから、すべてが変わってしまった。」

「あの子はまだあそこで...私を待っているのだろうか」

「なぜ私はここへ来た?なぜ立ち去って、二度と戻らないことができない?」

 

それは悪魔の器へと至る道だ。

その音楽はジョンだけでなく、かつてこの道を歩いたミリアムやマーティン夫人やメレディスら、冷たい現実の中で絶望に屈し悪魔に取り込まれていった者たちに捧げられる葬送曲のようで哀しく、どうしようもなく美しいと自分は思う。

 

 

Bad Ending翻訳雑記

Chapter3のBad Ending、音楽綺麗だし台詞もいちばん好きなので、じっくり見てもらえたら嬉しいというのが翻訳した者の贔屓目。あと、Chapter1で車で轢かせただけのマイケルのこと、ちゃんと悔やんでるのがわかってよかった…

Bad Ending 後悔の道

 

ジョンの器への道は静かで美しいものだったけれど、人によって器へと至る道は異なりそう。某FAITHのRTA配信でミリアムの言葉にならない断末魔みたいな叫び声(めちゃくちゃうるさい)を聞き続けたせいか、自分で器となる決断をしたミリアムの道はもっと過酷で、サバイバルモード悪魔いっぺんオプション有効くらいハードモードだったのかもしれないなあと想像している。

Airdorf氏インタビューより抜粋・私家翻訳 2時間17分頃から

※インタビュアーのWendigan氏の「どこかでおっしゃられてましたが、ミリアムはもともとトウモロコシ畑の悪魔に襲われた一人だったのですか」という質問に対して。

 

(Chapter2プロローグの2つめのメモの中で)トウモロコシ畑の悪魔に襲われた6人の残骸を埋めながら「身の毛もよだつようなこの仕事を終えたら、もう二度と孤児院の人間には会いたくない。昨夜、院の中にいたあの娘にも」という文章があるけれど、その娘がミリアムを示しているんだ。

そう、彼女は選ばれてしまったんだ。堕落させられてしまった。

本当は違う、彼女は悪魔じゃないし、生まれたときから悪い種子があったわけでもない。彼女の物語を語るべきかどうかはわからないけれど、彼女は何らかの理由で(神による)永遠の命を捨てたんだ、悪魔をこの世にもたらす力を得るために。

そうして、ミリアムはゲイリーをこの世にもたらしたんだ。

人類みな地獄に堕ちよ(サバイバルモード・all悪魔オプション有効)

 

結局、ジョンがどうして双子という偽物の幻影を作りだしてまで過去から逃げようとするのか、過酷な悪魔祓いを経ないと過去を思い出せないのかは正直よくわからない。けれど自分はなんとなく、過去に向き合う覚悟が持てないまま自分の過去、自分がなにをしたのか思い出したら、このBad Endingに行き着くしかないからかもしれないなと思っている。

にしても、弱い自分に向き合えなくて、それでもキツい現実を直視せざるをえなくなって、そのあまりの辛さに悪魔に呑まれて壊れてしまうなんて、いちばんまともなエンディングじゃないだろうか?

あやしげな儀式を行い、自分自身を死に至らしめるような悪魔祓いを続けることでしかたどり着けないGood Endingよりずっと。

 

 

最後に

この文章は先行ファンの方々のたくさんの蓄積や、日本語modで遊んでくれた人の感想・配信を見て多くの示唆を得たことから書くことができました。改めて感謝申し上げます。

 

FAITHは非常に多義的な作品です。自分が書いてきた「信仰と救済」というテーマをシリアスに取り扱う作品であるとともに、多くのホラーゲーム・ホラー映画を参照する優れたホラーゲームであり、いらいらするようなレトロアクションゲームであり、MORTISをはじめ笑えるミーム・イメージをたくさん含んだファンダムに愛される奇妙なアイコンでもあります。

これらが重なりあわさることで生まれる唯一無二の体験を、ぜひ実際にプレイして味わっていただけると嬉しいです。シンプルで複雑なゲームだからこそ、そこから何を感じ、見いだすかはプレイする人によって違うはずです。ゲームプレイを通してそれぞれのFAITHを見いだしてもらえたなら、それが翻訳modを作成した者としての喜びです。

 

(作品リンク・冒頭レビューに日本語modリンクあり)

開発者のインタビュー動画やこれに基づいたストーリー解説はこちら(英語)

Inside the Mind of FAITH: The Unholy Trinity - YouTube

The Game too Scary for 3D - The Hidden Story of FAITH: The Unholy Trinity - YouTube

 

 

 

始めたことを終わらせなければならない

始まってしまったことを終わらせるための話にお付き合いいただきありがとうございます。

この感想文は、救えなかった人がいる人のために書きました。あなたがなにを信じていても、信じられなくても、あなたの心にいつか安息が訪れることを願っています。