"Everything is going to be OK" 紹介とMISSING PAGE抄訳

 

ゲーム概要

"Everything is going to be OK"はミニゲーム、映像、テキストの断片を30個程まとめたZINE形式のゲームです。

残酷でカオスな世界で生きる?かわいいキャラクターと、強烈なビジュアル表現が特徴。あまりにもカオスだけれど、身を焼くような経験がユーモラスかつキュートに表現されている特異なゲーム(というかインタラクティブな表現媒体)になっています。

いわゆるゲーム性みたいなものはほとんどありませんが、こういった形でしか表現できなかったものがあるのだと、プレイして感じました。意外にボリュームと仕掛けがたっぷりで、探索しがいがあるのはちょっと楽しい。

itch.ioのページから無料でDL可能。寄付もできる。2023/4にSteam版も出た。

かわいいキャラクターが気になった人も、変わり種ゲームを探している人も、なにか引っかかるものがあった人も、お気軽にぜひ。

 

(itch.io)無料DL可

(Steam)620円


 

2022/5/14追記

本作がMoMAニューヨーク近代美術館)に収蔵されることになったそうです。itch.io発のゲームとしては初めてとのこと。おめでとうございます!!

 

 

MISSING PAGE抄訳

カオスなゲーム内デスクトップを探索している中で出会う”MISSING_PAGE”では、作者のいろんなメッセージがわりと直接的に語られています。

カオスなデスクトップ

”MISSING_PAGE_2”には、なぜこのゲームが作られたのか、なぜこんなにカオスで暴力的な世界が描かれているのかが、そして”MISSING_PAGE_4”には、このゲームを通じて何を伝えたかったのかが、率直に書かれています。

ということで、ゲーム内の膨大なイメージと言葉の中のほんの一部を私家翻訳したので載せておきます。ネタバレなので、一通りプレイした後に読むのを推奨です。

本作に興味を持ってもらうきっかけや、作品理解の手がかりのひとつになれば幸いです。

 

MISSING_PAGE2は暴力、自傷、衝撃的な内容を含みますのでご注意ください。

 

 

作者のことば

作者さんのことばがとても良かったので、作者ステートメントの引用・抄訳を掲載します。ゲームの中の膨大な言葉たちが、いつか現実の中で言えるようになる日を願って。

ARTIST'S STATEMENT

~EVERYTHING IS GOING TO BE OK~(ぜんぶ大丈夫!)

このZINEは、人生における経験、もがき苦しむことについての言葉、そして私自身が力を手に入れる奇妙なファンタジーのコレクションだ。

 

私たちは力や強さを持つことに対して、後ろ向きな考えを持ってないかな。それはずっとそうで、歴史的な家父長制の副産物なんだと思う。宗教から政治・経済まで、力とはどれだけ多くの人を服従させることができるかということだと考えられてる。尊敬とは、どれだけの人があなたの力を恐れているかということ。どれだけ他人を犠牲にして自分の欲しいものを手に入れられるか、私たち自身が作り上げた弱肉強食の世界で、一番大きな獣であることなんだと……

 

大衆的エンターテイメントの多くは、いつもこうした視点から描かれてきた。これは単純な事実。敵を傷つけ、排除するために力を使う。私たちのカルチャーに、サバイバーの立場から見た別の力の見方についての概念や議論はほとんどない。サバイバーにとって、力とはどのようなもの?トラウマと共に生きる人たちは強いのかな?精神の不調や強いPTSDを抱えてる人は強い?なぜ自殺は自分勝手で弱いことだと思われてるの?生きてる人がここまで追い込んだのに。

 

私たちは普通、サバイバー、被害者、トラウマを持つ人を強いとは見なさない。それは弱さだと見なされる。私はそれが好きじゃない。それは、私たちが痛みは乗り越えられないものと思うようなカルチャーを作り上げてしまったから。私たちは痛みを癒し、克服し、力を身に着けることを教えない。私たちは痛みとともに生きているのに、それを乗り越える方法がない。これは、私たちが「強さ」をどどう捉えるかに起因しているんだと思う。

 

強さのアイコンとは、どれだけ多くの人を傷つけ、征服し、圧倒することなんかじゃなくて、力による虐待をどれだけ乗り越えられるかだと思う。自分の身に起きてしまったことを抱えて、どれだけ長く生きていられるか。ただここにいること、それがどれだけ強いことなのか。あなたが強くあることがどれだけ力強いことなのか。強くなるしか選択肢がなかったのだとしても。

生き長らえることと、痛みを抱えて生きることは全く別の戦いで、本当の強さはここにあるんだと思う。この視点からすれば、あなたがここにいるだけで賞賛されるべきだっていうのは当然の結論だ。

あなたは普通に不完全で、普通に対処できる。あなたは自分の人生の物語の主人公で、それを誇りに思う権利がある。

 

これは、私が辛い思いをした時に感じていたこと、そしてその後どう感じたか、どうやって前に進んだか、その経験を抽象化してまとめたコレクションだ。

その多くは、ユーモアを通じて表現されたり馬鹿みたいなエピソードを作り出している。私には、人生って馬鹿馬鹿しいものに感じられる。次から次へと最悪なことが起こって、けっきょく笑い飛ばすしかなくなるっていう。その中でユーモアは、痛みを和らげるのを助けてくれるし、もしかしたら乗り越えるための踏み台を作ってくれるのかもしれない。それは、カタルシスになっていたんだ。

 

以上の翻訳について、開発者のNathalie Lawhead氏より許諾をいただきました。ご快諾いただきありがとうございます!(リンク