“Where The Water Tastes Like Wine”レビューとサウンドトラック紹介  

 在りし日のアメリカの物語を求めてさまよう最高の旅シミュレータ

 

(2023/02/18追記)

非公式の日本語化modが有志の方により作成されています。

リンク先の注意事項を確認のうえ、自己責任で適宜ご使用ください。

https://twitter.com/blizcavalier/status/1626928580373671936

 

 


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Steamに書いたレビュー

このゲームの目的は、悪魔と契約して骸骨となってしまった主人公が、アメリカ合衆国の「生きた」物語を集めて回ることだ。

主人公は、19世紀後半から20世紀初頭を思わせるアメリカ各地をめぐって、いろんな噂話を聞いたり奇妙な体験をする。

そして行く先々で出会う旅人、ギャンブラー、WW1帰還兵、黒人牧師、カウボーイ、メキシコ移民、ネイティブアメリカン、ヒッピーなど様々な人たちに、その物語を話してあげる。

彼らの多くは傷つき、苦しみ、哀しみを抱えながら、一方で貪欲で夢を見るのに必死だ。物語を必要とする人たちなのだ。彼らが望む話を披露できれば、お返しとして彼らが持つ物語を聞くことができる。

旅人たちにしてあげた話は、また別の町で誰かの噂話として聞くことがある。その時には、大げさになったりもっと面白くなったりしているかもしれない(ネコをかごに入れた変わった女の子に会った話が、いつのまにか魔法の猫を飼った魔女に出会った話になるなど)。

それは彼の国の人たちが生活する中で生み出し、伝え、育て上げた「生きた」物語だからだ。 f:id:ashi_yuri:20210716235125p:plain

ゲームの中心要素となる各地で出会う物語は、どれも短編小説の断片のように印象的で、怖い話や謎めいた話、良い話など様々な種類がある。旅人たちが背負う物語はどれも特徴的で、一筋縄ではいかない悲しみや情感にあふれている。200を超える物語と16人の旅人たちとの会話は、最後まで飽きずに楽しめると思う。

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また、グラフィック・音楽・演技など総じて演出の質が非常に高く、物語の持つ力を非常に良く引き出すとともに、旅気分を心地よく盛り上げてくれる。

各物語に付いた単色のラフスケッチや旅人のグラフィック(特に交流を重ねて最終段階で見られる真の姿!)は最高に格好良いし、カントリー・ジャズ・ブルースなど地域ごとにシームレスに変わる音楽はどこか寂し気で聴いていて心地よい。ストーリーを読み上げてくれるナレーターの声は渋くて聞きやすく、旅人たちとの会話は方言や地域特有のアクセントも取り入れながら情感豊かに演じてくれている。 

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とある旅人の真の姿

クリアまでの目安は20~30時間程度だが、クリアより過程が楽しいゲームだと思うので、特に気負わずプレイすればよいのではないでしょうか。

 

テキストが多いのに日本語対応がない、後半になると単調に感じやすい、エンディングがさっぱりしすぎなど難点もあるけれど、それを上回る唯一無二の魅力を持っているゲーム。

PVを見て気になった人や、在りし日のアメリカを旅してみたい人は、(セールで買って)はじめの1時間だけでもプレイしてみてほしい。

そして気に入ったなら、物語を聞き、語ることの魅力にあふれたこの旅を続けてほしい。

Well, stories end and I’m closin’ mine.

Where the water tastes like wine.

So, have a nice trip!
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英語について

自分はTOEIC500点代(高校基礎程度)でgoogle翻訳片手になんとか最後までクリア。

知らない単語や口語的な言い回しが頻出するため細かいニュアンスはだいぶ見落としていると思うが、とりあえず進められるので問題ない。文章自体はさほど複雑ではなく、急がされることもないのでゆっくり読める。アメリカの歴史や文化について知っているとより読みやすくなると思う。

 

ゲームプレイ

各地をめぐってstoryを集める→焚火で各キャラクターが求める種類の話をするのを繰り返し、キャラクターとの親交を深めることでゲームを進めていく。

全体の大きなストーリーの流れはないため、ゲームサイクルに慣れる後半になるにつれて単調に感じられるかもしれない。一方で、各地で集めるstoryや各キャラクターの話などコンテンツ自体は最後まで変わらず面白い。

ほかのゲームの合間に少しずつプレイするようなスタイルがおすすめ。飽きたら途中で旅をやめるのもあり。

 

Tips

チュートリアルが分かりにくいため、Tipsをまとめてみました。さらに困ったらSteamのガイドでほぼ解決!

・Shift+矢印キー:口笛を吹く(早歩き)

・M:マップを見る

・I:インベントリを開く

“Story”でタロットを選択すると焚火で話すことができる3つのstoryの入れ替えが可能

・ヘルス・お金・眠気の管理は適当で大丈夫。

デスペナルティはなく直近に寄った都市から再開となるだけ

・電車にただ乗り(Hop)しないとフィールドに表示されない未読ストーリーがある

・旅人の話が最終章になると特定の都市に飛べるポータルがもらえる

(インベントリで確認できる)

 

サウンドトラックについて

サントラも歌詞付きで非常に良いのでおすすめ。ボーナストラックも盛りだくさん。

あっさりしたエンディングの後に読む“Heavy Hands”の歌詞は、このゲームを数十時間も楽しむような人には必ず感じるものがあるはずです。
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 Track Notes

Track Notesがキャラクター紹介として最高に格好良いのでご紹介。

 

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悪魔のブルース

Altheaは名声と才能のため悪魔に魂を売った。彼女は全てを手に入れたが、代償を支払う準備はまだできていない。

Soulsucker Blues: Althea sold her soul to the devil for fame and talent. She got both, but wasn’t ready for what it cost her. Featuring Akenya on vocals and Joshua Du Chene on guitar.

 

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黒炭の息吹

Little Benは鉱夫の待遇向上を目指す組合員として厳しい生活を送ってきた。しかし、雇用主がガンマンを送り込み、さらに厳しい立場に追い込まれてしまう。

Breathe the Black: Little Ben already had a hard life as a union man trying to get by in the mines. But things got harder when the Company sent their hired guns in to put things back the way they were. Featuring Joshua Du Chene on guitar.

 

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たくさんの笑みを

レールの上の人生は魅力的に見えるかもしれない。しかし、Franklinは真実を知っている。それはあなたが切符を持つ者だった場合だけだということを。

Miles of Smiles: Life on the rails might sound glamorous to some, but Franklin knew that only held true if you were the one holding the ticket. Featuring Ryan Ike on piano.

 

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Curandera(マヤの祈祷師)

Fidelinaは古の道を実践する。古の道は喜び、平穏、安寧をもたらしてくれる。しかし古の道が消えゆくとき、我々はどこに向かうべきなのだろうか?

Curandera: Fidelina practices the Old Ways. The Old Ways bring succor, peace, safety. But when the Old Ways fade to nothing, where, then, are we to turn? Featuring Cody Richards on flute and Joshua Du Chene on guitar.

 

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この地からの飛翔

Shawの家族は奴隷制のもと苦しんできた。自由人となった今も、その苦しみは続く。

From This Field I Wish To Rise: Shaw’s family suffered beneath the yoke of slavery. Now, as a free man, not much has changed. Featuring Joshua Du Chene on guitar.

 

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象牙色に輝く島

Augustは大海で生きてきたが、その生活は失われてしまった。いまの彼は、かつて離れたはずの陸に囚われ溺れている。

Shining Isles of Ivory: August made a life on the high seas, but that life was lost to him. Now, trapped on the land he once cast off from, he’s drowning.

 

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ひねり出せ

Cassidyは考える。美しさと苦しみで詩ができているのであれば、自由なあり方こそ、詩であり自分自身だと。

Noodle It Out: If beauty and heartbreak are the stuff of poetry, Cassidy figured the open road was as much a poet as he was. Featuring Ryan Ike on piano.

 

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塵から塵へ

Dustbowlに吹き荒れる豪風が残したものは岩石だけ。その石はかつてBerthaだった。石はどこにも行くことはないだろう。

Dust to Dust: They say the heavy winds in the Dustbowl left nothing but stones behind, and stone is what Bertha became. She would not be moved.

 

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我がための塹壕

Masonは戦争で脚を失った。だが、彼の行進はまだ終わらない。

This Trench Was Dug For Me: Mason may have lost a leg to the war, but his marching days are far from over.

 

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Rail Hoppin’(無賃乗車)

二頭の犬、よく研いだナイフ、まだ見ぬ海岸へと向かう列車の揺れる音。他人には十分には思えなくても、Quinnにはそれで十分だ。

Rail Hoppin’: Two dogs, a sharp knife, and the rattling thrum of a boxcar bound for new shores. Might not seem like much to some, but for Quinn, it was plenty. Featuring Joshua DuChene on Guitar

 

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あがりよ

米国人の寓話として、ギャンブルで振るサイコロに勝るものはない。遅かれ早かれ運は尽きるのだ。

Read ‘Em and Weep: No better allegory for American Life than rolling the dice on a big gamble. Everyone’s luck runs out, sooner or later. Featuring John Robert Matz on trumpet and Kristin Naigus on oboe.

 

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破壊

信仰を持つ者にとって、信じるべきものが残されていない時代とは苦難の時である。しかし、信仰とはそのようなものではなかっただろうか?

Tear It Down: It’s a hard time for a man of faith when there’s not much left to believe in. But then, isn’t that what faith is all about? Featuring Akenya on vocals and Ryan Ike on organ and piano.

 

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道は覚えている

長い道のりは部族から多くのものを奪っていった。故郷の地へ帰ることだけがこの傷を癒す方法なのかもしれない。

The Road Remembers: The Long Walk took a lot of things from a lot of people. Tracing it back home might be the only way to heal. Featuring Michael Begay on flute.

 

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虹の車輪

日は沈む、愛の夏であっても

Rainbow on Wheels: The sun always sets, even in the Summer of Love.

 

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白き馬乗り

古き西部は死にかけている。白き馬乗りがもうすぐやって来る。

White Rider: The Old West is dying. Might not be long until the Rider comes calling. Featuring Joshua Du Chene on guitar and vocals.

 

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根付きと芽生え

土を耕し、成長を助けなさい。この地はもうあなたの一部なのだから。

Root and Rise: Dig your fingers into the soil, help something grow. This land is part of you now. Featuring Joshua Du Chene on guitar and hand drum and Cody Richards on Flute.

 

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放浪者の歌(Deep South)

この南部の沼地や岸辺ではすぐに道を見失ってしまうだろう。だが、多くの者はそれを楽しんでいる。

Vagrant Song (Deep South): Easy to get lost in the swamps and bayous of this land. Most folk like it that way. Featuring Joshua Du Chene on guitar and vocals.

放浪者の歌(Appalachia)

厳しい土地は厳しい民に道を譲る、と言われている。

Vagrant Song (Appalachia): Hard lands give way to hard people, or so they say. Featuring Jeff Ball on Fiddle, Jillian Aversa on vocals, and Joshua Du Chene on Guitar

放浪者の歌(Midwest)

寒い野外でこそ暖かい焚火は明るさを増す。

Vagrant Song (Midwest): The cold outside just means a warm hearth burns all the brighter. Featuring Elizabeth Zharoff on vocals.

放浪者の歌(Southwest)

すぐれた物語は国境を越える。ここにはたくさんの国境を越えた物語がある。

Vagrant Song (Southwest): Some of the best stories are those that have crossed borders. Plenty to be had here. Featuring May Claire La Plante and Jose Daniel Ruiz on vocals and Joshua Du Chene on guitar.

放浪者の歌(Northwest)

誰にも彼らを操ることはできない。彼らは自分自身のために決断するのだ。

Vagrant Song (Northwest): You can’t tell someone when they’ve found prsoperity. They gotta decide that for themselves. Featuring ViderI String Quartet: Lizzie Jones and Michael Hustedde on violin, Roselie Samter on viola, and Jeremiah Barcus on cello.

 

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唸り

この国はお前をどうにかして呑み込んでしまうだろう。

Howl: This land will swallow you whole, one way or another. Featuring Jeff Ball on fiddle and Joshua Du Chene on guitar.

 

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不器用な手で

この国は物語の上に成り立っている。それはアメリカという一つの大きな物語であり、その物語はたくさんの小さな物語により織り上げられている。

Heavy Hands: This land is build on stories. It’s one big story, America is, woven of many small ones. Featuring Max Wolpert and Jeff Ball on fiddle, May Claire La Plante and Joshua Du Chene on vocals, and Joshua Du Chene on guitar.

 

 

Track Noteからも分かるとおり、テキストが非常に魅力的でなので英米文学とかが好きな人にもおすすめです。