"Kentucky Route Zero" Weaver Márquezという存在について

これは「ケンタッキールートゼロ」の謎めいた登場人物、ウィーバーマルケスの足跡を追い、彼女が何をしようとしていたのか考えるための記事です。ゲーム中に断片的に示される情報を年代順にまとめています。

※エンディングまでネタバレ注意。画像は非公式翻訳mod使用。

 

 

 

ウィーバーマルケスについて

ウィーバーマルケス(Weaver Márquez)

Weaverという名前のとおり物語を織りあげ、繋いでいく人。

本作の主要登場人物であるシャノン・マルケスの従姉妹であり幼馴染。才能ある数学者の不思議な女性。

頭は良いが変わったところのある女性で、シャノンは旅の中で幾度も彼女のことを思い出している。炭鉱の文化を調査していたアーキビストの両親が買った家に住んでいたが、炭鉱事故により親は失職し、家を手に入れるための借金そしてウィーバーの大学の学費のため家計は破綻していた。彼女は数年前に失踪し、姿を消している。

初登場はAct.1マルケス農家。主人公であるコンウェイを「ゼロ号線」へと導くため、テレビを修理するためにシャノンと会うように示す。

ゲーム中では、ゼロ号線で彼女が辿った様々な足跡と出会うことになる。

Act.1 マルケス農家

Act.1 マルケス農家



年表

(参考)Weaver Márquez - Highway 0, the Kentucky Route Zero wiki

 

ウィーバーの電波ジャック・海賊放送について

ウィーバーインターンとして働いていた「町」のWEVP-TVから失踪した後、数か月に一回程度の頻度で繰り返し発生するようになった怪現象。白黒のノイズの中で字幕が繰り返し表示され、最後に一瞬女性の姿が映る。どこが電波の発信元なのかは不明。

Un Pueblo de Nadaで見た通り、嵐で崩壊するWEVP-TVの最後の放送となる。作業場の監視モニターでこの放送を見たシャノンはエルクホーン鉱山へと向かい、コンウェイと出会うことになる。

 

(放送内容・字幕)

できるだけ深く地下へ潜って。空気は冷たく、大地は湿っていて、眼を閉じれば死者たちがとり囲んでいる。その場所がどこだか覚えている?その場所からたどり着ける。

そこがあなたの探している場所。すぐに洗い流されるものもあるけれど、郵便局や学校、そしてあの偉大で悲劇的な馬たちがいなくなっても、あなたならここで幸せになれる。

Act.4 マッキー・マンモス船上のビデオに録画されていた海賊放送

海賊放送の映像は、開発者Youtubeにより動画にも上がっている。


www.youtube.com

 

ウィーバーの目的について

「ケンタッキールートゼロ」は、誰のものかもわからないアンティークを、ゼロ号線を通ってハナミズキ(Dogwood)の咲く家『ドッグウッド通り5番の家』に届けるまでを描いたゲームです。

ウィーバーの海賊放送は誰に何を伝えたかったのか、リゼット・アンティークに家具を注文したのは誰なのか、なぜあの家でウィーバーが待っているのか、このゲームは語ることはありません。

ゲームを最後までプレイしたのなら、その答えはそれぞれの円環の中での選択、会話、行動を通じて、すでにあなたの中にある(あるいは、ない)のだと思います。

あなたがどんな円環を歩み、何を選択したにしろ、そこに「ドッグウッドの家」はあり、ハナミズキの木の下でウィーバーは待っています。

あなたが「家に帰る」日を。

 

Act.5 ハナミズキの木の下であなたと

Act.5 No Longer Home



 

補遺

Kentucky Route Zeroは生と死と円環を描いた普遍的な物語なのかもしれないし、社会におけるコミュニティの再生と崩壊を描いたパブリックな論題なのかもしれないし、たった一人に幸せになってほしいという極めて私的なメッセージだったのかもしれない。そして私にとって、とても美しい芸術でした。

 

エンディングで5幕の劇は終わるかもしれないが、主人公の旅は常に新たに始まる。「ケンタッキールートゼロ」は、旅をすること、辿り着くこと、やり直すことの意味について、切実で思慮深い思索を生み出している。

「ケンタッキールートゼロ」は答えよりも多くの幽霊を、もういちど旅を始める希望と憂鬱だけを、私たちに残す。

それは最上のさよならだ。

The End of the Road: Saying Goodbye to Kentucky Route Zero – Ampersand