SLUDGE LIFE1+2 グラフィティによるストーリーテリング、あるいはタガー達に捧げるラメント

Sludge Life1+2のタガー達との交流やエンディングの描き方がとても良かったのでその感想文。
「街のどこに、なにを描くか」というスプレー落書き(グラフィティ、タグ)を通じて浮かび上がる、言葉にならない物語・キャラクターがほんといい。あえて文字にするのは無粋で蛇足だけど、自分が書きたいので。

 

※Bomb=スプレーで落書きする(ボムる、爆弾を落とす)というスラング
※1,2ともエンディングまでネタバレ注意

 

SLUDGE LIFE

ヘドロの上に建つ大資本が牛耳る港湾都市。今日はストライキで誰も君を止めるひとはいない。奇妙で愛嬌豊かで諦観に満ちた人たちが暮らす街を、アルコール片手にタバコをくゆらせ散歩しながら気ままにグラフィティまみれにしていく3Dアドベンチャー

 

タガーたち

スプレーで街をグラフィティ(タグ)まみれにする仲間

HANS

白くて大きい手がトレードマークの人間タガー。絵の雰囲気の通り、ご機嫌で気のいい先輩枠。タグ描いてる場所もそんなに難しくなくて「オレ参上ww」という感じ、新入りに優しそう。EDで別れのタグを描いてくれたりしていて意外に義理堅い。
2では出てこないけど、明るく元気に生きててほしい。

HANSのごきげんなタグとみんなでコラボ!
MOSCA

ダウナーで正統派なハエ型タガー。ちょっとイルな感じのハエの絵がトレードマーク。初心者がどうやってここに来たんだろう?と驚くような、高い場所や行きづらい場所によくBOMBってる。面倒見いいわけじゃないけど、先例を示して、時々つるんでくれる先輩という感じ。
2でも変わらずな感じで安心。

いい先輩!
DOUBLE DOUBLE

口ワル隻眼☓2の人間姉妹タガー。金が好き。シンボルは黄色い双頭の隻眼ネコ。目を失ったのは、秘密裏に島で行われてる実験の影響か?経済活動や人が活動している場所(商店やアパートや運動場)を中心にBOMBる。その作風からか、大資本の親玉で今作の悪役GREG氏もDOUBLE2のファンである。ビビる。

変なスクショしかなくてごめん

社長室に飾られてる!

UZZI

反骨精神を持つ真面目なゴブリンのタガー。権力の中枢グレッグタワーの裏や通信塔の側面など、大資本の象徴的な場所の隅にBOMBってる。シンボルは赤い銃。わかりやすいね。会話も真面目でほんとに街のことを心配してるめっちゃいい人。ダメなことには真正面からダメっていうタイプ。
2では、警察署の正面にBOMBり勾留されてる。変わらなすぎて安心なような心配なような。仲間もいるし、しぶとそうな人なのでたぶん大丈夫、なはず。

真面目でいい人なんだろうなと感じるタグ

TIA

プロテストの意志を持ち続ける最古参のばあさんタガー。伝説となったタガーKING EYESのかつての仲間でもある。赤い紅茶に浮かぶ白いガイコツがシンボル。

あやしげな研究をしてる化学研究所やほんとにヤバい爆弾格納施設の入口近くなど、権力者にとって見られたくないけど逮捕はされないギリギリの場所にBOMBってるの、風雪をくぐり抜けた古参の風格を感じる。

こだわりすぎないシンプルな画風も、危険な場所でゲリラ的に描き続けてきた説得力があり格好いい。KING EYESとの確執を語る含蓄ある会話も、一人になっても活動をずっと続けている哀愁ある背中もぜんぶいい。好き。

2では……

工場裏で

最古参でこのスピリット、格好良すぎないか
KING EYES

グレッグタワー足元のヘドロの隙き間のコンテナに住むかつての伝説のタガー、ことあやしいじいさん。タグれる場所がわかる自分の目(物理)をくれる。より多く、より目立ち、よりリスクの高いタグを求めるあまりおかしくなってここにいる。自分の後継者を探している。



GHOST

我らが主人公。

小柄で子供みたいな見た目で、腕っぷしはからきし(鳥につつかれても反撃できない程)。ほかのタガーたちとのコンボの絵を見てもやられキャラで通ってそう。かわいい後輩枠。

愛嬌のある緑のスライムがシンボルで、場所によっては動物や双子スライムも描いてくれる。巨大な銅像のてっぺんから秘密施設の最奥まで、好奇心のおもむくまま好きなところにBOMBる。大資本はSHxTだけど、なんやかんやでこの街も人も嫌いじゃない。
2の話は下で。

みんな仲良しタグ



エンディング

GOODエンド

ふつうに街を脱出するだけなんだけど、ほんと良かった。街じゅうをBOMBるために苦労して隅々まで歩き回ったからこそ、クソみたいに終わってる街、自分や仲間たちがいろんな思いを込めてタグまみれにした街に、ちゃんと別れを告げていくことがとても感傷的に感じられる。
BOMBは愛。



BADエンド

全部爆破エンド。

BOMBと共に街にさよならを告げる、という意味ではGOODエンドと同じ展開でもある。KING EYESのタグが示すとおり、愛のないBOMBの末路。
ちなみにこちらも正史寄りであることが2でわかる。

 

WEIRDエンド

おめでとう!あなたこそ伝説のタガーKING EYESです。目はもういりませんね。




SLUDGE LIFE2

今度は豪華ホテルがそびえ立ち、そのふもとにヘドロが広がる街。収録日に失踪してしまったヒップホップミュージシャンBIG MUDを探しながら、奇妙な街を探検してグラフィティまみれにしていこう。

2になると、他のタガーがあんまり街をBOMBってなくて寂しい。今作は明らかにグラフィティでストーリーテリングすることが少なくなってて残念なんだけど、それも一つのメッセージなのかもしれない。

 

タガーたち

SLUG

バナナナメクジが大好きな初心者タガー。暗い子だけどタグが好きなハートはピュアで、GHOSTのことを尊敬してる。
初心者っぽく絵はうまくないし、BOMBる場所も簡単にいけるところばかりだけど、ナメクジがいそうな湿ったところを好むの好感が持てる。

のっぺりした絵がそれっぽい

まぶしすぎて心が痛む

 

DOLO

DOUBLE DOUBLEの片割れ。姉はグレッグ傘下の広告会社のグラフィックデザイナーとなり、妹はひとりでタグるのを続けており袂を分かっている。商店とアパートにタグが少し。猫も双頭ではなく、ふつうの猫になってる。

順当な展開ではあるけどすごく悲しい。

眼のために金が必要なこと、魂のためにどこにも属さないこと、どちらも否定できず、根っこには同じ思いがあるはずなのにこういう結果となってしまったことを、悲しい気持ちで見守ることしかできない。

かわいいけどさみしいグラフィティ

ひとり佇む(妹)

ひとり佇む(姉)
PEEP

高いところが好き。かわいいね。

ポッポー!!
OVNI

人間の住む街を観察してる宇宙人。ほとんどBOMBってない。

ジャンクなクソにまみれた地獄みたいなこの場所こそが愛に満ちた天国だと語ってくれる。それはSLUDGE LIFEシリーズのテーマだよね。それを台詞だけじゃなくて、グラフィティで語ってほしかった……

無尽蔵に散らばるアルコール、スプレー缶、煙草の吸殻、つまり愛


GHOST

1で街を出てから特にすることもなく、ツテのあるミュージシャンBIG MUDの付き人をしてる。タガーとしては中堅となってて後輩に慕われてたりするが、自身はちょっとスランプ?ぎみ。

BIG MUDが宣伝ソングを歌う子ども用タバコの看板を塗りつぶしたり、大資本の最奥で街を死に至らしめる秘密を見つけたりして、なんとなく現状に不安と抵抗を覚えてはいる。が、特になにもできないままエンディングへと向かう。タグも悲観的なものが増えていてちょっと迷いを感じる。

ちなみに故郷である1の街は、ネクロキノコが繁茂した影響で爆破され消滅した。

子どもにタバコを吸わせないで!

最奥の秘密



 

エンディング

ブルーニバース・ライヴ

BIG MUDも見つかったし、故郷出身のふたつ肛門の猫は守れたし、ラップやタグは変わらず続けられてよかったね!ただしお前には、大資本の犬として子供にタバコを吸わせるCMソングを歌ってもらう。

歌は格好いいけど、こんなので終わっていいわけないだろ……このED見るのかなしすぎる……

PVは格好いいけどさあ
ネクロ菌

Sludgeから生まれた命がすべてを呑み込み、街に死をもたらす!幻覚オチ。キノコこわい。

グランマの愛

タグをぜんぶ描くとたどり着けるエンディング。タグは反乱分子のための秘密の暗号だったんだ。今こそ武力闘争による富の再分配の狼煙をあげろ!

「グランマ」の指示のもと、1の抵抗派タガーも集まり警察から盗み出した銃でグレッグの豪華水晶シャンデリアを破壊しみんなに分け与える義賊エンド。

唐突で一方的な展開(伏線はあるけど)やフザケた演出と相まってなんか夢みたいに見えるし、スプレー缶より重いもの持てなさそうな連中ばかりで不安だし、タガー達に銃を持ってほしくないんだけど。

どこかでリアルさを失わなかった他の部分と比較してもフィクション性が高く、いまいちこの展開がハッピーエンドだと一プレイヤーとして信じきれないのが正直なところ。たいした覚悟もないのに過激派にオルグされたというか……。結局、gregが子供にタバコ売りつけるの止められなかったし。

そしていちばん辛いのは、タグはもう自由で楽しく描くための「目的」じゃなくて、仲間との連帯を示す「手段」となってしまったこと。

ベランダから見える、近くにあるはずのMOSCAの絵が遠いよ。

しのごの言わず銃を取れ

楽しく描いてたあの絵が遠い

 

最後のアイテム

上述のGrandma loves you.エンドをクリアすれば、すごく高くまで跳べるジャンパーが手に入る。これで街の中なら、どこへでも自由に行ける。

なにをすべきかもわからないけど。

街のいちばん高い場所からさようなら

 

全体を通して

2のストアページのリード文とかだと痛快でやりたい放題のゲームに見えるけど、全実績取って遊びきった自分の感想としては、Sludge生まれのカルチャーも商業主義に呑みこまれていく中で、グラフィティの楽しさ・自由さ、権力に唾を吐きかけるようなSludgeの猥雑な強さを信じられなくなってるんじゃないかって思うような、哀しみと寂しさを感じるゲームだった。

それを描くのはディベロッパーとしての誠実さだと思うし、嫌いじゃないけれど。

 

なんやかんやで街の楽しさは変わらず、たくさんの街の住人たちやSludgeの動物たちはより一層へんでだらしなくて愛嬌豊かで、静かななかでたまに流れる本格的なヒップホップも多彩で、プレイしてるとずっと居心地がよくてすごく好きな作品でした。

ヘドロに浮かぶ「悲しみラジオ」

 

最後に

Sludge(廃棄物、ヘドロ)とは、巨大資本がもたらすいろんななクソみたいな副産物、ジャンクな食べ物、煙草、酒、過剰な商業主義、無為な労働などに、そこに住む人の諦めや哀しみや汗を混ぜ合わせて発酵させた、臭い金と企業のにおいが染み付いてドロドロになったものなんだと思う。

だから大資本に楯突くだけでは終われないものがあるんじゃないかな。人も街も大資本から離れられなくて、自分たちの故郷であるそこに愛着もありながら、人間扱いしない企業を憎み諦め抵抗している。そんなSludgeの矛盾、そしてSludgeから生まれた人々やカルチャーを豊かで楽しく愛に満ちてリアルに描き、その魅力を教えてくれたシリーズだからこそ、自分はとても気に入ってる。


いつかまた、饐えてあたたかいヘドロの上で会えることを楽しみにしてるよ。



 

※自分で撮ったスクショ以外の画像はSludge Life Wikiから引用しました。